top of page
Convisage
本ブログの内容は、あくまで代表 徐勝徹の個人的な見解であり、Projeteam, Inc.の公式見解や業務上の立場を示すものではありません。
検索

行雲流水
雑考ブリコラージュ


思考の環境としてのAI──支配ではなく構成という問題
シリーズ: 行雲流水 AIについて語られるとき、それは多くの場合、人格を持つ巨大な存在の比喩で語られる。人間より賢い何かが現れる。人間を支配する。人間をだます。人間を不要にする。これらの像にはわかりやすさがある。脅威に顔があり、敵に名前がある。だから物語にしやすく、論じやすい。 だが、AIが本当に深く社会を変えるとすれば、それはこの種の人格的支配の形ではないかもしれない。AIは外側から人間に命令する超越者ではなく、人間が考え、書き、判断し、思い出す過程の内側に入り込み、その過程の前提条件を組み替える存在として作動しているように見える。問題は支配ではなく、構成である。誰が、どのような認知環境のなかで人間が考えるようにするか、という問題である。 本稿はこの問題を、言語との類比、認知の摩擦、個人主義の変質、設計論という四つの角度から検討する。 言語が世界の見え方を変えたこと 言語は、現実に後から名前を貼るためのラベルではない。言語は現実の分節を変える。同じ行為でも、それを倹約と呼ぶかケチと呼ぶかで、行為に含まれる評価は変わる。同じ出来事でも、ろうそくが

Seo Seungchul
6月16日読了時間: 13分


トークンを燃やせ、という呪文の構造──資源配分と余白の政治経済学
シリーズ: 行雲流水 「トークンを燃やせ」という言葉が、組織内で奇妙な説得力を持ち始めている。 半導体大手の経営者は、年収の半分に相当するトークンを使っていないエンジニアを深刻に懸念すると述べた。別の場では、計算資源(compute)、トークン(tokens)、知能(intelligence)、経済産出(economic output)を一本の因果連鎖として語り、「1ワットあたりどれだけのトークンを生み出せるか(tokens per watt)」がCEOレベルの成長指標になるとも述べている。その言説に付随する形で、「使った量が成長量である」というメッセージが画像として流通する。 一見するとこれはAI活用を促す合理的な助言に見える。道具を使える立場にあるのに使わないのは生産性の損失だ、という指摘自体は否定しがたい。 しかし、この言説には見落とされている構造がある。 本稿が問題にするのは、AIを使うこと自体ではない。「消費した量」が「成長した量」にすり替わるとき、個人・組織・市場・インフラ・政治経済の各レイヤーで何が起きているかだ。そして最終的には、

Seo Seungchul
6月12日読了時間: 13分


文脈の権威化──AIと組織の制度的分業をめぐって
シリーズ: 行雲流水 判断の来歴が、組織のどこにも残っていない。 これは、企業にAIエージェントを導入する際に最初に直面する問題だ。ルールは文書化されている。前例らしきものも、どこかのフォルダに眠っている。しかし「なぜ、あの時、あの例外が認められたのか」という問いに答えられる記録は、多くの場合、特定のSlackチャンネルと退職した担当者の記憶の中にしかない。 この問題を「AIの知能が足りない」と解釈するのは誤りだ。構造化されていない文脈は、どれほど高性能なモデルを使っても読めない。問題の所在は、推論器の性能ではなく、推論の前提条件が機械可読な形で保持されていないことにある。 「Context Graph」という概念が、この問題への応答として登場した。しかしこの概念は、AIの推論を賢くするための新しいモデルとして読み込まれてしまうことが多い。本稿は、その混同を解きほぐすことから始め、その先にある問い——文脈を「正しい」と決めるのは誰か——に向かって議論を組み立てる。 基盤と推論器は別物——「substrate」の意味 Context...

Seo Seungchul
6月8日読了時間: 10分


知は、固まることをやめるのか
シリーズ: 行雲流水 AIが「誰かの文章」を学習して「誰のものでもない何か」を出力するとき、何が起きているのか。著作権の問題として語られることが多いこの問いには、もっと深い層があると思っています。 「誰が書いたか」「誰のものか」という感覚そのものが、近代に特有の——そして人類史のスケールでは例外的な——発明だとしたら?そしてAIはその例外を終わらせつつあるとしたら? 知財制度の議論が続く中で、富良野とPhronaは少し遠くまで想像力を伸ばしてみます。所有が溶けた後に何が来るのか。「共同体に埋め込まれた知」と「プラットフォームに埋め込まれた知」は何が違うのか。そして、流れが変わるとき、私たちには何ができるのか。 紫式部は一人で書いたのか Phrona: 源氏物語って、紫式部が一人で書いたかどうか、実はまだ決着していないんですよね。 富良野: そうなんですよ。写本の系統が複数あって、異本の間に差異が大きすぎる部分がある。宮中で複数の女房たちが読み、書き写し、補い、加筆しながら流通していた可能性が高い。 Phrona: 「作品」というより「テキストの群

Seo Seungchul
5月24日読了時間: 13分


錨のない時代の統治――世界四大統治論が問い続けた、正統性という資源
シリーズ: 行雲流水 前回、四冊の統治論を並べて読みながら、ある問いが残りました。マキャベリ、カウティリヤ、韓非子、ニザーム・アル・ムルク——四人は処方箋が全く違っても、「統治はきれいごとでは回らない」という前提を共有していた。そして韓非子だけが、他の三人とは違う問いを立てていた。「何を根拠に従うのか」という問いを、他の誰よりも深いところまで掘り下げていた。 その問いは、四冊の時代だけの問いではないかもしれません。富良野とPhronaは今回、その問いをもう少し先まで歩いてみます。正統性とは何か。なぜそれが必要なのか。そしてそれが揺らぐとき、何が起きるのか。 「何を根拠に」という問いの射程 Phrona: 前回の終わりのところで、韓非子が「何を根拠に権力に従うのか」という問いを立てていた、という話をしましたよね。あれがずっと頭に残っていて。 富良野: 韓非子の面白いところは、その問いを立てた上で、「答えを探すのをやめよう」という方向に動いたことですよね。歴史にも徳にも宗教にも根拠を求めず、明文化された法だけを根拠にすると言い切った。 Phrona:

Seo Seungchul
5月10日読了時間: 14分


人類史上の四大統治論――危機の時代に書かれた、権力についての最も醒めた思索
シリーズ: 行雲流水 マキャベリの『君主論』は、知っている人が多い。しかし同じ「統治論」として並べられるべき本が、世界にはあと三冊あります。古代インドのカウティリヤが著した『アルタシャーストラ』、中国戦国時代の韓非子による『韓非子』、そして11世紀ペルシアの宰相ニザーム・アル・ムルクが書いた『スィヤーサト・ナーメ』。 四冊はいずれも、実際に権力と向き合う人間に向けて書かれた実務の書です。哲学的な考察でも歴史の記録でもなく、「どうすれば統治は機能するか」という問いへの、切迫した処方箋として書かれた。地理も言語も文明的な前提も全く違うのに、同じ問いに向かっています。権力はどう維持されるのか。人はなぜ従うのか。統治はなぜ壊れるのか。 富良野とPhronaは、この四冊を並べて読みながら、あることに気づきます。四人の著者たちは似た問いを立てていながら、驚くほど違う答えを出した。その「ずれ」の正体を追っていくと、統治論の奥に、もっと根本的な問いが潜んでいることが見えてきます。 同じ前提、違う処方箋 富良野: 四冊を並べて読んでいて最初に感じるのは、共通点の多

Seo Seungchul
5月10日読了時間: 12分


AIに追われた人と、SNSに疲れた人は、どこへ向かうのか――「人間的な場」への渇望
シリーズ: 行雲流水 SNSから離れているのに、SNSを使い続けている——そんな状態を、どう説明すればいいでしょう。2025年の調査では、米国の10代の48%が「SNSは同世代に概ね悪影響だ」と答えました。2022年には32%だったのが、わずか3年で跳ね上がっています。でも95%のZ世代は、依然として何らかのSNSを使い続けています。心理的には離脱しながら、身体はまだそこにいる、という奇妙な状態です。 この話と、全く別のところで起きていることを並べてみます。AIによる採用抑制や業務自動化によって、翻訳者・ライター・初級エンジニアといった「平均的な知識労働者」が、雇用の周縁に追いやられ始めています。彼らが向かっている先も、奇妙なことに「小さく、招待制で、人間的な」場所です。 富良野とPhronaがこの二つの動きを話し込むうちに、ある問いが浮かびあがってきました。「本物」への渇望が、まったく異なる出発点を持つ人たちを、同じ方向へ引き寄せているとしたら——それはどういうことなのか、と。答えは出ませんでしたが、問い自体が面白い場所に着地しました。...

Seo Seungchul
4月30日読了時間: 12分


3次元の外側を考える――量子もつれと環世界
シリーズ: 行雲流水 私たちが当たり前だと思っている3次元世界は、本当に世界そのものなのか。それとも、人間という観測者にとって安定して前景化した、一つの現実層にすぎないのか。 本稿は、量子もつれを「見えない糸」と説明することへの小さな違和感から出発し、0次元、スペクトルとしての次元、デコヒーレンス、環世界、情報的宇宙観という論点をたどりながら、この問いを考えていく試みです。量子力学の専門的解説ではありません。非専門家の立場から、現代物理が示す奇妙な事実を手がかりに、私たちにとっての「現実」とは何かを考え直してみたいと思います。 量子もつれは、見えない糸のようなものだ、という説明を何度か読んだ。そのたびに、どこか引っかかる。わかった気にはなる。だが、腑には落ちきらない。 糸には長さがある。張力がある。途中がある。切れることもある。けれど、量子もつれをめぐるベル型の相関は、そうしたイメージとうまく重ならない。距離が伸びるほど古典的な力のように弱まっていくわけではない。だから、糸という比喩は便利ではあっても、核心を外している気がする。 では、何として考

Seo Seungchul
4月20日読了時間: 19分


「賢い街」は誰のために賢いのか――スマートシティを再考する
シリーズ: 行雲流水 スマートシティという言葉は、もう何年も前から街づくりの合言葉のようになっています。センサー、データ、AI、最適化。でも「賢い街」とは、いったい誰にとって賢いのか。フーコーが提起したバイオポリティクス(生政治)と統治性という概念を補助線にすると、都市が管理しているのはインフラではなく、人々の「生」そのものであることが浮かび上がってきます。そこから見えてくるのは、技術で街を賢くする話ではなく、生きやすさをどう公共的に編成するかという、はるかに深い問いです。 スマートシティという言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。センサーが街中に張り巡らされ、交通渋滞をAIが解消し、ゴミ収集のルートが自動で最適化される——そういう、なんとなく便利そうな未来像が浮かぶかもしれません。 でも、ちょっと立ち止まって考えてみると、不思議なことに気づきます。「賢い」のは誰なのか。街が賢くなるとは、具体的に何がどう変わることなのか。そして、その「賢さ」は、誰のためのものなのか。 富良野とPhronaの対話は、まずその問いから始まります。スマートシティの

Seo Seungchul
4月9日読了時間: 22分


なぜ北欧でも中国でもなく、パキスタンだったのか──「動かせる仲介」の条件
シリーズ: 行雲流水 2026年4月8日(日本時間)、米国とイランの間で2週間の停戦が成立しました。軍事攻撃の期限が迫る数時間前、ぎりぎりのタイミングで合意を引き出した「唯一の通信チャネル」は、多くの人にとって意外な名前でした。パキスタンです。 国際紛争の仲介といえば、ノルウェーのような北欧諸国や、近年存在感を増す中国を思い浮かべる方が多いかもしれません。なぜ今回、そのどちらでもなく、パキスタンが交渉の中心に立ったのか。そこには「中立であること」よりも「両方とすぐ繋がれること」を重視する、外交のリアルな力学が見えてきます。 富良野は、パキスタンが米国・イランの双方に持つ「接続回路」の構造に注目し、仲介国が選ばれるメカニズムを読み解こうとします。一方のPhronaは、「信頼されていないのに動かせる」という逆説的な立ち位置に関心を寄せ、外交における信頼と接続の違いを問い直します。 好かれている国が動かせるとは限らない。では、外交において本当に「力」になるものは何なのか——今回の停戦劇を手がかりに、二人の対話が始まります。 意外な名前 Phrona:.

Seo Seungchul
4月7日読了時間: 15分


人口1万6千人の島が、「独立しない」と決めた理由──アンギラの.aiドメインと"自治のグラデーション"
シリーズ: 行雲流水 カリブ海の小さな島アンギラが、世界のAIブームの恩恵を最も直接的に受けている場所のひとつだと聞いたら、驚くでしょうか。人口わずか1万6千人、面積91平方キロメートルのイギリス領海外領土が、国別コードトップレベルドメイン「.ai」の爆発的な需要によって、国家予算の約半分をまかなうほどの収入を得ている。しかも、その富を債務削減や教育のデジタル化、医療の無償化拡大、太陽光発電、サンゴ礁の修復にまで振り分けている。 前回のサンマルタン島に続いてカリブ海を訪れた富良野が持ち帰ったのは、この島の「お金の使い方」以上に、「独立しないという選択」への関心でした。十分な経済力を手にしながら、なぜイギリス領のままでいることを選ぶのか。Phronaはそこに、主権を白か黒かで捉えない「自治のグラデーション」という発想を見出します。棚ぼたの富と、それを受け止めるガバナンスの器。ふたりの対話は、小さな島の選択から、「自立とは何か」という問いへと静かに広がっていきます。 棚ぼたの島 富良野: この前サンマルタン島の話をしましたけど、実はあのとき、近くの

Seo Seungchul
4月5日読了時間: 16分


スマホが「国境」を教えてくれる島──87km²に走る、見えない制度の断層線
シリーズ: 行雲流水 カリブ海に、面積わずか87平方キロメートルの島があります。北はフランス領サン・マルタン、南はオランダ領シント・マールテン。ふたつのヨーロッパ国家が分け合う、世界最小の共有地。ところが、この島には国境検問所も税関も壁もありません。車で走っていると、道端の小さな看板で「あ、国が変わったのか」と気づく程度です。では国境はどこにあるのか。それは、スマートフォンの画面に突然現れる「国際ローミング」の通知であったり、財布の中の通貨が切り替わる瞬間であったり、病院の窓口で保険証が通らないという事実であったりします。 出張でこの島を訪れた富良野が持ち帰ったのは、お土産ではなく「制度の地層が剥き出しになった地形」という強烈な体感でした。目には見えないけれど、生活のあちこちに走っている制度の断層線。Phronaは「国境が消えた場所でこそ、国境の正体が見える」と応じます。ふたりの対話は、この小さな島の土産話から、私たちが「国」や「制度」をどう捉えているのかという、意外に身近な問いへと静かに歩み出していきます。 国境が消えた場所で、国境が見えてくる

Seo Seungchul
4月5日読了時間: 16分


「完璧な民主主義」は数学的に存在しない──それでも、うまくやる方法はある
シリーズ: 行雲流水 「みんなで決める」はずなのに、なぜ社会の決定はいつもこんなにひどいのか。気候変動も、格差も、パンデミックへの対応も、技術的な解決策はとっくに存在していました。問題は知識や資源ではなく、「集団としての意思決定の質」にあるのかもしれません。 1951年、経済学者のケネス・アローはひとつの数学的証明を発表しました。「完璧に公平な多数決ルールは、原理的に存在しない」——この衝撃的な結論は、民主主義の根拠そのものを揺さぶるものでした。では僕たちは何を諦め、何を目指せばいいのか。 この対話では、富良野とPhronaが17世紀の政治哲学者が生み出した「トリマー」という概念を手がかりに、数学的不可能性の先にある「次善の設計」を探っていきます。制度の自己腐食メカニズムから、Polisや二次投票といったテクノロジーの新しい試みまで。「うまく集団で決める」ことへの、真摯で少し迂回した問いの旅です。 「完璧な多数決」は存在しない、という話から始めよう 富良野: 昨日、 The Atlanticのコラム を読んだんですよ。意思決定のモデルとして、英

Seo Seungchul
3月28日読了時間: 16分


民主主義を守るには「効率の悪さ」が必要――トランプ政権が教えてくれた権力分散の価値
シリーズ: 行雲流水 民主主義って、本当に「効率が悪い」もののように見えます。大統領が何か決めても、州政府が反対する。行政命令を出しても、裁判所が差し止める。予算をつけようとしても、議会が拒否する。ビジネスの世界なら「意思決定が遅い」と批判されそうな仕組みです。 でも、その「非効率さ」こそが、権力の暴走を食い止めるセーフティネットになっている――。それを生々しく見せてくれたのが、2017年から2021年までのトランプ政権の4年間でした。 今回の富良野とPhronaは、トランプ政権をケーススタディとして、アメリカの制度的安全装置がどのように機能したかを振り返りながら、制度設計の「地味だけど本質的な部分」について語り合います。 「野心には野心を」――制度設計の基本思想 富良野 :トランプ政権下のアメリカの経験って、一歩引いて見るといわば「ストレステスト」として捉えることもできると思うんです。アメリカの制度的安全装置がどこまで機能するか、壮大な実験がなされている。 Phrona :ストレステストという言い方、面白いですね。普段は意識しない配管や基礎工事

Seo Seungchul
3月21日読了時間: 14分


実はいちばんリスキーなのが、「投資しない」という選択かもしれない
シリーズ: 行雲流水 投資と聞くと、株価の上下に一喜一憂したり、仮想通貨で一攫千金を狙ったりするイメージが浮かぶかもしれません。「自分には関係ない」「リスクが怖い」と距離を置いている人も多いでしょう。でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。銀行口座に眠っているお金は、本当に「安全」なのでしょうか。 今回、富良野とPhronaが語り合うのは、投資の根本にある考え方についてです。利殖や資産運用のテクニックではなく、もっと手前にある問い——私たちが「価値」だと思っているものは、実は何なのか。円やドルという「物差し」自体が揺れ動いているとしたら、何もしないことの意味も変わってくるはずです。 富良野とPhronaの二人の対話を通じて見えてくるのは、投資が「お金持ちの趣味」ではなく「防衛のためのインフラ」だという視点。そして、元手の大きさによって戦略がまったく変わるという現実です。 円は「物差し」じゃなくて「商品」 富良野: 投資の話をすると、だいたい「どの株を買えばいいですか」みたいなところから始まりがちなんですけど、僕はもっと手前のところが気になっ

Seo Seungchul
3月2日読了時間: 10分


大統領の一般教書演説の後、スペイン語で語られた「もうひとつのアメリカ」――言語が政治になる瞬間
シリーズ: 行雲流水 アメリカの大統領は毎年、議会に向けて「一般教書演説」というスピーチを行います。国の現状と政策の方針を語る、いわば国家の年次報告です。 ところで、その演説が終わった直後に、野党側が「応答演説」を行う慣行があることを知っていましたか?ニュースではあまり取り上げられませんが、1960年代から続く制度的な慣行です。 そして2026年2月24日、その応答演説が英語だけでなくスペイン語でも行われました。スペイン語で語ったのはカリフォルニア州選出の上院議員アレックス・パディリャ。メキシコ系移民の息子として育ち、カリフォルニア州初のラテン系連邦上院議員となった人物です。 なぜ英語ではなくスペイン語なのか。その問いを入口に、富良野とPhronaが「スペイン語がアメリカ政治において持つ意味」と、「ヒスパニック」という括りの複雑な内側へと踏み込んでいきます。言語はときに、制度よりも正直に、社会の地殻変動を映し出します。 大統領演説のすぐ後に、もうひとつの演説がある 富良野: 一般教書演説って、日本でいうと施政方針演説みたいなもので、大統領が議会で

Seo Seungchul
2月25日読了時間: 11分


AIに"からだ"は必要か?――フィジカルAIが直面する5つの壁
シリーズ: 行雲流水 ChatGPTに代表される生成AIは、私たちの働き方や学び方を大きく変えました。文章を書き、コードを生成し、画像まで作り出す。けれど、ふと気づくのです——このAI、動けないじゃないか、と。 いま、AI開発の最前線では「フィジカルAI」という言葉が飛び交っています。ロボットや自動運転車のように、物理的な体を持ち、現実世界で動くAIのことです。NVIDIAのCEOジェンスン・フアンは「次の10年はフィジカルAIの時代だ」と宣言し、テスラやGoogle、OpenAIも続々とこの領域に参入しています。 しかし、話はそう単純ではありません。AIが「体を持つ」とは、いったい何を意味するのか。なぜデジタル空間であれほど賢く振る舞えるAIが、現実世界ではまだぎこちないのか。そこには、技術だけでは解決できない壁がいくつも立ちはだかっています。 今回は、富良野とPhronaの二人が、フィジカルAIの本質と課題について語り合います。「体があること」と「自分で動けること」の違い、人間という驚くべき汎用機の存在、そしてAIが物理世界を理解するために必

Seo Seungchul
2月22日読了時間: 13分


「自分の中の矛盾を、見つめて認める力」――ジェシー・ジャクソンが遺した問いかけ
シリーズ: 行雲流水 差別に声を上げ続けた人が、自分の中にも差別があると告白したら、どう受け止めますか。 公民権運動の指導者として半世紀以上にわたり社会変革を訴え続けたジェシー・ジャクソン牧師が、2026年2月17日に84歳で亡くなりました。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の暗殺に立ち会い、その遺志を受け継いで組織を立ち上げ、2度の大統領選に挑んだ人物です。彼の死を受け、追悼の言葉が政界・市民社会のあらゆる方向から集まりました。 富良野とPhronaは彼のある印象的な発言に注目し、彼の言葉と生き方から、差別・自己認識・連帯について、話し合います。 足音の話 There is nothing more painful to me at this stage in my life than to walk down the street and hear footsteps... then turn around and see somebody white and feel relieved. (道を歩いていて足音が聞こえ、振り返ったとき

Seo Seungchul
2月17日読了時間: 9分


格差は止められないのか?──r>gと民主主義のジレンマを考える
シリーズ: 行雲流水 AIが世界を変える。その確信は、おそらく正しいのでしょう。問題は、その「正しさ」が投資の成功を意味するわけではないということです。 94歳の投資家ウォーレン・バフェットが、近年まれに見る慎重さを見せています。記録的な現金を積み増し、ハイテク株を一部売却し、静かに、しかし明確に警鐘を鳴らしている。彼の言葉によれば、今の市場の熱狂は「ドットコム・バブルよりも危険かもしれない」——それも、AI自体が問題なのではなく、AIを取り巻く「投機」と「債務」の組み合わせが問題だと。 興味深いのは、この議論がさらに深い問いへと発展することです。投資家が失った金は、本当に「失われた」のか。それとも、社会全体の「実験コスト」として、次世代のインフラを築いているのか。そして、その実験が暴走したとき、壊れるのは経済システムだけなのか、それとも、私たちが「社会」と呼んでいるものの土台そのものなのか。 今回は、富良野とPhronaが、バフェットの警告を入り口に、資本主義の動態、バブルの社会的機能、そして「社会契約」という見えない紐帯について考えます。 ピ

Seo Seungchul
2月10日読了時間: 15分


バフェットが「誰も聞いていない」と嘆く理由──AIブームの果てにある本当のリスク
シリーズ: 行雲流水 AIが世界を変える。その確信は、おそらく正しいのでしょう。問題は、その「正しさ」が投資の成功を意味するわけではないということです。 94歳の投資家ウォーレン・バフェットが、近年まれに見る慎重さを見せています。記録的な現金を積み増し、ハイテク株を一部売却し、静かに、しかし明確に警鐘を鳴らしている。彼の言葉によれば、今の市場の熱狂は「ドットコム・バブルよりも危険かもしれない」——それも、AI自体が問題なのではなく、AIを取り巻く「投機」と「債務」の組み合わせが問題だと。 興味深いのは、この議論がさらに深い問いへと発展することです。投資家が失った金は、本当に「失われた」のか。それとも、社会全体の「実験コスト」として、次世代のインフラを築いているのか。そして、その実験が暴走したとき、壊れるのは経済システムだけなのか、それとも、私たちが「社会」と呼んでいるものの土台そのものなのか。 今回は、富良野とPhronaが、バフェットの警告を入り口に、資本主義の動態、バブルの社会的機能、そして「社会契約」という見えない紐帯について考えます。 「

Seo Seungchul
2月10日読了時間: 10分
bottom of page