なぜEthereumよりAvalancheがゲームのビッグタイトルから選ばれるのか?──ブロックチェーンゲームの新たな潮流
- Seo Seungchul
- 6月16日
- 読了時間: 7分
更新日:6月30日

シリーズ: 知新察来
FIFAやMapleStoryといった大手ゲームタイトルが、相次いでAvalanche上でのチェーン構築を発表しています。なぜEthereumではなくAvalancheなのでしょうか。
その背景には、2024年12月に実施されたAvalanche9000という大型アップグレードがありました。初期コストの劇的な削減、既存インフラの活用、そして独自トークンへの価値蓄積という3つの要素が、ゲーム業界の選択を変えつつあります。
本記事では、ブロックチェーンゲームの新たな潮流について、富良野とPhronaが話します。
富良野: 最近、Avalancheにビッグタイトルのゲームがどんどん集まってるの知ってます? FIFAとかMapleStoryとか。
Phrona: ああ、確かに話題になってますね。でもなんでEthereumじゃなくてAvalancheなんでしょう?
富良野: 実は去年12月のAvalanche9000っていう大型アップグレードが転機だったみたいです。バリデーターの経済モデルががらっと変わって。
Phrona: 経済モデルって、どういう風に?
富良野: 以前は2000AVAXっていう固定のステーク要件があったんですけど、それが従量課金制になったんです。初期コストがぐっと下がった。
Phrona: なるほど、参入障壁が下がったんですね。でも、それだけでゲーム会社が飛びつくものかな。
富良野: いや、それがですね、コスト面でかなり魅力的らしくて。独立したL1チェーンを立ち上げるのに、CelestiaのロールアップやCosmosのアプリチェーンより安いかもしれないって試算も出てる。
Phrona: へえ、そんなに安いんだ。でも安いだけじゃゲーム会社は動かないでしょう?
富良野: そうなんです。実はもっと大きなメリットがあって。AvalancheのC-Chainっていう既存のインフラを活用できるんですよ。
Phrona: C-Chainって、Avalancheのメインチェーンみたいなもの?
富良野: そう、流動性のハブですね。たとえば、ゲーム会社が独自チェーンを作っても、C-Chain経由でCEXのランプを使えるんです。普通なら直接統合するのに、トークンの何パーセントか払わないといけないところを。
Phrona: ああ、既存のインフラにタダ乗りできるってこと?
富良野: タダ乗りというか、相互運用性を活かしてるんです。オラクルとかRPCとか、NFTマーケットプレイスとか、そういうのを全部自前で用意すると1300万ドルくらいかかるって言われてて。
Phrona: 1300万ドル!それは確かに大きいですね。
富良野: Ava Labsの戦略責任者が言ってたんですけど、これで開発チームは時間と何百万ドルも節約できるって。
Phrona: でも、そういう相互運用性って技術的に難しくないんですか?
富良野: ICMっていうプロトコルがあって、それでチェーン間のメッセージングができるんです。実際、MapleStoryのチェーンとC-Chain間では毎日何千件もメッセージが行き来してる。
Phrona: へえ、もうそんなに活発なんだ。でも私、ちょっと気になることがあって。
富良野: なんです?
Phrona: ゲーム会社って、結局自分たちのトークンで稼ぎたいわけじゃないですか。
Avalancheのエコシステムに乗っかって、それって実現できるんですか?
富良野: いい質問ですね。実はそこもAvalanche L1の強みで。独自のバリデーターセットを作れるから、ブロック報酬を自分たちのトークンで出したり、ガス代として使ったりできる。
Phrona: なるほど、価値の蓄積ができるんだ。
富良野: そう。これ、Ethereum L2だとできないんですよ。L2は基本的にガバナンストークンくらいしか価値を持たせる方法がない。
Phrona: ああ、だからゲーム会社にとって魅力的なのか。自分たちのエコノミーをコントロールできる。
富良野: しかもHyperSDKっていうツールで、かなりカスタマイズもできるらしくて。ロールアップだと制約が多いけど、Avalanche L1なら自由度が高い。
Phrona: でも富良野さん、そうなるとAVAXトークンの価値ってどこから来るんです?みんな独自チェーン作っちゃったら。
富良野: 実はそこも考えられてて。まず、C-Chainの手数料は100%バーンされるんです。SolanaやEthereumは部分的だけど。
Phrona: 100%バーン...デフレ的ですね。
富良野: 今年に入ってから月平均45万ドルくらいバーンされてます。あと、バリデーターは依然としてAVAXをステークする必要があって、今80億ドル分くらいステークされてる。
Phrona: なるほど、基盤として機能し続けるんですね。
富良野: それと、各L1のバリデーターが月額でAVAXを少額払うシステムになってる。バリデーターの数によって数百から数千ドルくらい。
Phrona: ちりも積もればってやつですね。でも、これって結局どういう戦略なんでしょう?
富良野: 僕の理解では、短期的な利益を犠牲にして長期的な成長を目指すモデルですね。初期コストを下げて、エコシステムを大きくする。
Phrona: ああ、Amazonみたいな?
富良野: まさに。実はEthereumも似たようなことやってて、L2に実行手数料を譲って、将来的にデータ可用性で稼ごうとしてる。
Phrona: なるほど、みんな同じ方向に向かってるんだ。でも、ゲーム会社がこぞってAvalancheを選ぶのは、やっぱり実利的な理由が大きそうですね。
富良野: そうですね。コストが安い、インフラが使える、自由度が高い、トークンに価値を持たせられる。ゲーム会社にとっては理想的かも。
Phrona: でも長期的に見て、これでAvalancheは儲かるんでしょうか?
富良野: 正直、賭けだと思います。でも、何もしなければジリ貧だし、エコシステムが大きくなれば結果的にAVAXの需要も増えるっていう読みでしょうね。
Phrona: ゲーム業界の動向次第ってことか。FIFAとかMapleStoryが成功すれば、他も続くかもしれない。
富良野: そういうことです。先行者利益を狙ってるんでしょうね、Avalancheも、ゲーム会社も。
ポイント整理
Avalanche9000によってバリデーター参入のハードルが大幅に下がった
2024年12月の大型アップグレードで、固定ステーク要件(2000AVAX)が従量課金制に変更された
この変更により、独立したL1チェーンを立ち上げる初期コストが劇的に削減された
コスト面でAvalanche L1は他のソリューションより優位性を持つ
CelestiaロールアップやCosmosアプリチェーンよりも安価に構築できる可能性がある
既存インフラを自前で構築すると約1300万ドルかかるが、C-Chain経由で利用することで大幅な節約が可能
C-Chainの既存インフラを活用できることが大きなメリットとなっている
CEXとの直接統合には高額な費用とトークンの一部提供が必要だが、C-Chain経由なら回避できる
オラクル、RPC、NFTマーケットプレイスなどの基本インフラもすぐに利用可能
ゲーム会社は独自トークンに価値を持たせやすい仕組みを評価している
Avalanche L1では独自のバリデーターセットを構築し、ブロック報酬を自由に設計できる
Ethereum L2ではガバナンス以外に価値蓄積の手段が限られるが、Avalanche L1なら多様な選択肢がある
AVAXトークンは複数の仕組みで価値を維持している
C-Chainの手数料は100%バーンされ、月平均約45万ドルの買い圧力を生んでいる
各L1のバリデーターが支払う月額費用もAVAXの需要を支えている
Avalancheは短期的利益を犠牲にして長期的成長を狙う戦略を取っている
EthereumやCelestiaも同様に、初期段階では収益性より エコシステムの拡大を優先している
FIFAやMapleStoryといった大手タイトルの成功が、さらなるゲーム会社の参入を促す可能性がある
キーワード解説
【Avalanche L1】
Avalanche上で独立して動作するレイヤー1ブロックチェーン。独自のバリデーターセットとコンセンサスメカニズムを持つ。
【C-Chain(Contract Chain)】
AvalancheのEVM互換チェーン。エコシステムの流動性ハブとして機能。
【ICM(Interchain Messaging)】
Avalancheチェーン間でメッセージとアセットを移動させるプロトコル。相互運用性の核となる技術。
【HyperSDK」
AvaCloudが提供する高度なカスタマイズが可能な開発キット。L1チェーンの柔軟な設計を可能に。
【ACP-77】
Avalanche9000の一部として実装されたプロポーザル。バリデーター経済モデルの大幅な変更を実現。
【バリデーター】
ブロックチェーンの取引を検証し、新しいブロックを生成する主体。ネットワークのセキュリティを維持する役割。
【ガス代】
ブロックチェーン上で取引を実行する際に必要な手数料。ネットワークの混雑状況により変動。