CardanoとPolkadotが見据えるビットコインの未来
- Seo Seungchul
- 6月16日
- 読了時間: 8分
更新日:6月30日

シリーズ: 知新察来
暗号通貨の世界で、ちょっと意外な動きが起きています。長らくビットコインのライバルとして独自の道を歩んできたCardanoとPolkadotが、揃ってビットコインに接近し始めました。
CardanoのCharles Hoskinssonは1億ドル相当のADAをビットコインに変換すると発表し、Polkadotも50万DOTをビットコインへの投資に回すことを検討しています。これは単なる投資戦略の転換なのでしょうか、それとも暗号通貨業界全体の構造が変わろうとしているサインなのでしょうか。
競争から協調へ、あるいは多様性から画一化へ——この動きが意味するものを、午後のお茶の時間のような雰囲気の中で、少し真剣に考えてみたいと思います。
Phrona:富良野さん、最近暗号通貨界隈で面白い動きがありますね。CardanoのCharles Hoskinssonが1億ドル相当のADAをビットコインに変換すると発表したり、Polkadotも似たような戦略を検討しているとか。
富良野:ああ、これはなかなか興味深い現象ですね。一見すると、自分たちのトークンを売ってビットコインを買うという、ある種の降参のようにも見えるでしょう?でも実際はもっと複雑な戦略なんです。
Phrona:そうですね。でもなんだか、新しいものを作ろうとしていた人たちが結局古い権威に頭を下げているような...そんな印象も受けてしまって。
富良野:いや、むしろこれは、ビットコインという既存の巨大なインフラを活用して、自分たちの技術的な強みを活かそうという、かなり戦略的な判断なんですよ。
Phrona:なるほど。具体的にはどういうことでしょうか?
富良野:たとえば、Cardanoには拡張UTXOモデルという独自の技術があります。これはビットコインのUTXOシステムを発展させたもので、より複雑なスマートコントラクトを実現できる。つまり、ビットコインの安全性と信頼性を保ちながら、DeFiのような高度な機能を提供できるわけです。
Phrona:技術的な補完関係ということですね。でも私が気になるのは、なぜ今このタイミングなのかということです。ビットコインは以前からあったのに、なぜ今になって急に接近しようとするのでしょう?
富良野:それは市場の成熟度が関係していると思います。ビットコインにTaprootというアップグレードが導入されて、より複雑なスマートコントラクトが可能になった。それに、BlackRockのような機関投資家が大量のビットコインを保有するようになって、DeFiへの需要も高まっている。
Phrona:ああ、技術的な準備と市場環境が整ったということですね。でも、それって結局のところ、既存の金融システムに歩み寄っているということにはならないでしょうか?暗号通貨の本来の理念から離れてしまうような...
富良野:でも、逆に考えると、ビットコインという最も分散化されたネットワークを使って、新しい金融システムを構築できる可能性もある。ただ、機関投資家の影響力を認める一面もありますので、確かにPhronaさんがおっしゃるような懸念もありますよね。
Phrona:はい。私が感じるのは、何というか、多様性の喪失への不安です。CardanoもPolkadotも、それぞれ独自の哲学や技術的なアプローチを持っていたはずなのに、結局みんなビットコインに向かっていく...
富良野:でも、それを画一化と見るか、それとも生態系の進化と見るかは難しいところです。自然界でも、異なる種が共生することで、より複雑で豊かな生態系が生まれることがありますよね。
Phrona:共生...確かにそういう見方もできますね。でも、Polkadotの場合は特に複雑だと思うんです。DOTがビットコインに対して価格的に劣ってしまったから、という実利的な理由もあるようですし。
富良野:そうですね。もし年初からビットコインを積み立てていれば150万ドルの利益が出ていたという試算もある。これは純粋に投資戦略としての合理性もあるでしょう。
Phrona:そこなんです。理念だけでは生き残れないし、かといって実利だけでは魂を失ってしまう。その間のどこかで、新しいバランスを見つけようとしているのかもしれません。
富良野:興味深いのは、HoskinssonがビットコインDeFiの重要性を強調していることです。これまでビットコインは価値保存の手段としての色合いが強かったのに、今度はより積極的に金融活動の基盤として使おうとしている。
Phrona:それって、ビットコインの性格が変わってきているということでもありますよね。静的な金庫から、動的なプラットフォームへと。
富良野:まさに。そして面白いのは、CardanoとPolkadotがその変化を外側から支援しようとしていることです。ビットコインを改造するのではなく、ビットコインの周りに新しい機能を付け加える。でも、そうなると競争から協調へと関係性が変わってきますね。
Phrona:そうですね。でも、協調という言葉も慎重に使いたいです。結局のところ、ビットコインが中心になって、他のブロックチェーンがその周辺に位置するという、ある種のヒエラルキーが生まれる可能性もありますから。
富良野:確かに。でも、それが必ずしも悪いことかどうかは分からない。インターネットでも、TCPやIPといった基盤プロトコルの上に、様々なアプリケーションが構築されて豊かなエコシステムができた。
Phrona:なるほど、レイヤー構造ですね。でも、インターネットの場合は誰か一人が所有しているわけではないけれど、ビットコインの場合は...少し違うような気もします。
富良野:それは重要な点ですね。ビットコインも非中央集権的とは言っても、実際には大口の保有者や、マイニングプールの影響力は無視できない。
Phrona:そこが気になるところなんです。結局のところ、新しい技術的可能性と、既存の権力構造の再編成が同時に起こっているような気がして。
富良野:少なくとも、CardanoやPolkadotのような異なるアプローチが存在することで、多様性は保たれるんじゃないでしょうか。
Phrona:そうですね。多分、私たちが今見ているのは、まだ始まったばかりの変化なのかもしれません。最終的にどんな形になるかは、まだ誰にも分からない。
富良野:Hoskinssonはビットコインが250万ドルから500万ドルになると予測していますが、価格よりも興味深いのは、その過程でどんな新しい使い方が生まれるかということです。
Phrona:価格の話になると、どうしても投機的な側面が強調されがちですが、本当に大切なのは、それが社会にとってどんな意味を持つかということですよね。
富良野:そうですね。技術は中立だけれど、その使われ方は決して中立ではない。CardanoとPolkadotのビットコイン接近も、最終的には私たちがどう使うかにかかっている。結局のところ、これは実験なのかもしれませんね。
Phrona:はい。そして、実験である以上、失敗する可能性もある。でも、失敗を恐れて何もしないよりは、試してみる価値があるのかもしれません。
富良野:同感です。少なくとも、現状維持よりは面白い未来が待っていそうです。ただし、その過程で何が失われ、何が得られるのかは、しっかりと見守っていく必要がありますね。
ポイント整理
Cardano創設者Charles Hoskinssonが1億ドル相当のADAをビットコインとCardanoベースのステーブルコインに変換する計画を発表した。 この戦略は、ビットコインのDeFi(分散型金融)での存在感を高めることを目的としている。
CardanoのextendedUTXOモデルがビットコインの技術基盤と相性が良いとHoskinssonは主張している。 ビットコインにTaprootアップグレードが実装され、より複雑なスマートコントラクト機能が可能になったことが背景にある。
機関投資家の参入がビットコインDeFiの追い風となっている。 BlackRockのような金融大手が数十万BTCを保有するようになり、ビットコインブリッジングの技術革新とあわせて採用拡大を後押ししている。
Hoskinssonはビットコインが2年以内に25万ドルから50万ドル、2030年までに100万ドルに達すると予測している。 この見通しはCathie Woodなど他の専門家の楽観的な市場予測と一致している。
Polkadotコミュニティも同様の戦略転換を検討しており、50万DOT以上をtBTCに段階的に変換する提案が出されている。 これはHydrationの自動DCA(ドルコスト平均法)プラットフォームを通じて実行される予定である。
Polkadotの動きは投機的な動機だけでなく、オンチェーン流動性の向上とDeFi機能の強化を目的としている。 Threshold Networkの分散型BTCブリッジを使用し、セキュリティと非カストディアル保管を重視している。
DOTの価格がBTCに対して劣勢だったことも戦略転換の要因となっている。 年初からビットコインに投資していれば150万ドル以上の利益を得られていたという試算があり、財務リスクヘッジの側面もある。
キーワード解説
【ADA財務基金(ADA Treasury)】
Cardanoエコシステムの開発資金として蓄積された17億ADAの保管庫
【拡張UTXO模式(Extended UTXO Model)】
ビットコインのUTXO構造を発展させたCardano独自のスマートコントラクト実行方式
【Taprootアップグレード(Taproot Upgrade)】
ビットコインのプライバシーとスマートコントラクト機能を向上させた2021年の重要な技術改良
【ビットコインDefi(Bitcoin DeFi)】
ビットコインを基盤とした分散型金融サービスの新興分野
【tBTC(Tokenized Bitcoin)】
Threshold Networkが提供する分散型ビットコインブリッジトークン
【ドルコスト平均法プラットフォーム(DCA Platform)】定期的に一定額を投資することでリスクを分散する自動投資システム
【クロスチェーン流動性(Cross-chain Liquidity)】
異なるブロックチェーン間での資産移動と流動性提供の仕組み
【非カストディアル保管(Non-custodial Storage)】
第三者に依存しない自己管理型の暗号資産保管方式
【財務多様化(Treasury Diversification)】
プロジェクトが保有資産の種類を分散してリスクを軽減する戦略
【機関投資家採用(Institutional Adoption)】
企業や金融機関による暗号資産の本格的な投資・活用