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なぜビットコインは「お金」になれないのか?──BIS報告書が暴く仮想通貨の限界

更新日:8月3日

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シリーズ: 論文渉猟


◆今回のレポート:"Next-generation monetary and financial system takes shape, based on a tokenised unified ledger" (BIS Annual Economic Report 2025)


デジタル技術が金融の世界を根底から変えようとしています。スマートフォンで決済するのが当たり前になった今、私たちの「お金」はどこへ向かうのでしょうか。


国際決済銀行(BIS)が2025年の報告書で示したのは、トークン化技術による金融システムの大変革でした。中央銀行のデジタル準備金、民間銀行のデジタル預金、そして政府債券をすべてデジタル化し、一つの統一された台帳で管理する——そんな未来のお金の形が見えてきました。


一方で、近年急成長するステーブルコインについては、真の意味でのお金の要件を満たしていないと厳しい評価が下されています。お金の「統一性」「弾力性」「完全性」という三つの試金石に照らすと、ステーブルコインは限界があるというのです。


この報告書が描く未来は、私たちの日常にどんな変化をもたらすのでしょうか。技術革新と信頼の基盤をどう両立させるのか。富良野とPhronaが、お茶を飲みながら考えを深めていきます。




「お金」って何だろう?— 技術が問い直す基本概念


富良野:このBISのレポートを読んでいて、改めて「お金って何だろう」って考えさせられました。普段、僕たちはあまり意識しないけれど、お金には三つの大切な性質があるんですね。統一性、弾力性、完全性。


Phrona:統一性っていうのは、どこで使っても同じ価値で受け入れられるということですよね。私がコンビニで100円玉を出しても、あなたが銀行振込で100円を送っても、同じ100円として通用する。当たり前すぎて、普段は気づかないけれど。


富良野:そうそう。でも実は、これって結構すごいことなんです。日本中、いや世界中の銀行が発行する「お金」が、みんな同じ価値で受け入れられている。これは中央銀行という信頼できる機関があるからこそ成り立っている仕組みなんです。


Phrona:なるほど。でも弾力性って何でしょう?お金が伸び縮みするわけじゃないですよね。


富良野:これは面白い概念で、要するに「必要な時に必要なだけお金を供給できる柔軟性」のことです。例えば、企業が急に大きな取引をしなければならなくなった時、銀行がすぐに融資できるとか、中央銀行が金融機関に流動性を供給できるとか。


Phrona:ああ、経済の血液循環みたいなものですね。血管が詰まったら大変なことになる。でも、その「完全性」っていうのは?


富良野:これは金融犯罪や不正な取引を防ぐ仕組みのことです。マネーロンダリングとかテロ資金調達とか、悪いことに使われないようにする防波堤ですね。銀行には本人確認義務があったり、怪しい取引を報告する義務があったりする。


Phrona:つまり、お金って単なる交換手段じゃなくて、社会の信頼とルールの結晶体みたいなものなんですね。技術が進歩しても、この三つの性質は守らなければいけない。


ステーブルコインの光と影— デジタル通貨への期待と現実


富良野:富良野:そこで登場するのがステーブルコインです。暗号資産の世界と従来の金融システムを橋渡しする存在として注目されているんですが、BISの評価は結構厳しいんですよね。


Phrona:テザーとかUSDCとか聞いたことはありますが、具体的にはどんな問題があるんでしょう?


富良野:まず統一性の問題。ステーブルコインって、実は発行者によって微妙に価値が違うんです。「赤いドル」「青いドル」「白いドル」みたいに、同じ1ドルと称していても、発行者の信用度によって取引価格が変わることがある。


Phrona:えっ、そうなんですか?てっきり1ドルは1ドルだと思ってました。


富良野:これが「デジタル手形」の性質なんです。従来の銀行預金なら、最終的には中央銀行の口座で決済されるから確実に同価値になる。でもステーブルコインは、受け取った人が特定の発行者に対する債権を持つことになる。だから発行者の信用リスクがつきまとうんです。


Phrona:なるほど。弾力性の方はどうでしょう?


富良野:これも大きな問題で、ステーブルコインは「現金前払い制約」があるんです。新しいステーブルコインを発行するには、必ず事前に同額の資産を用意しなければならない。銀行みたいに、必要に応じて貸し付けを拡大したり縮小したりする柔軟性がない。


Phrona:つまり、経済が急激に成長したり、逆に収縮したりする時に、適切にお金の量を調整できないということですね。それって結構深刻な問題な気がします。


富良野:そうなんです。現代の金融システムでは、企業が急に大きな支払いをしなければならない時、銀行が与信枠を提供したり、中央銀行が金融機関に流動性を供給したりできる。でもステーブルコインのシステムだと、そういう柔軟性がないんです。


Phrona:完全性の問題もありそうですね。匿名性が高すぎて、悪用される可能性があるとか。


富良野:まさにその通りです。ステーブルコインは「デジタル手形」として国境を越えて自由に流通できるんですが、これが逆に金融犯罪に使われやすくしている。本人確認をしていないウォレット同士で取引できちゃうし、マネーロンダリングの温床になりかねない。


トークン化の革命— 統一台帳が可能にする新しい金融の形


Phrona:でも、デジタル技術自体は悪いものじゃないですよね。問題はその使い方ということでしょうか。


富良野:その通りです。BISが提案しているのは、「トークン化」という技術を使って、従来の金融システムの良い部分を残しながら、デジタルの利便性も活かそうという発想なんです。


Phrona:トークン化って、具体的にはどういうことなんですか?NFTとかと関係あります?


富良野:基本的な概念は似ているんですが、もっと実用的なものです。お金や債券などの金融資産をデジタルトークンとして表現して、プログラムで自動的に取引や決済ができるようにするんです。


Phrona:プログラムで自動的にというのは?


富良野:例えば、今は国際送金をしようとすると、複数の銀行や決済機関を経由して、それぞれで別々に処理が行われますよね。でもトークン化された統一台帳があれば、送金指示、口座更新、決済を一つの操作で同時に実行できる。


Phrona:まるで魔法みたいですね。でも、そんなことが本当に可能なんでしょうか?


富良野:技術的には可能です。スマートコントラクトという仕組みを使って、「条件Aが満たされたら自動的に処理Bを実行する」というルールをプログラムに組み込める。証券取引でいえば、「代金の支払いと同時に証券の所有権も移転する」といったことが瞬時に行える。


Phrona:それは確かに効率的ですね。でも、そこには人間の判断が入る余地がないということでもありそう。何かトラブルが起きた時は大丈夫なんでしょうか?


富良野:良い指摘ですね。だからこそ、BISは「統一台帳」でも中央銀行を中心とした既存の金融システムの枠組みを維持することを提案しているんです。技術は新しくても、信頼の基盤は従来通り中央銀行が提供する。


三位一体の未来— 中央銀行、民間銀行、政府債券のデジタル融合


Phrona:BISが提案している「三位一体」というのは、具体的にはどういうものなんでしょう?


富良野:トークン化された中央銀行準備金、トークン化された民間銀行預金、そしてトークン化された政府債券を、一つの統一台帳で管理するという構想です。それぞれが補完し合って、強固なデジタル金融システムを作る。


Phrona:なるほど。中央銀行準備金がデジタル化されると、何が変わるんでしょう?


富良野:まず、決済の最終性が保証されます。今でも銀行間の決済は中央銀行で行われていますが、それがよりスムーズに、瞬時に行える。しかも、プログラムで自動化できるから、24時間365日稼働することも可能になる。


Phrona:民間銀行の預金がトークン化されるメリットは?


富良野:従来の二層構造——中央銀行と民間銀行の役割分担——を維持しながら、新しい機能を追加できることです。例えば、条件付き支払いとか、複数の取引を同時に実行するとか、今まで人手でやっていたことを自動化できる。


Phrona:政府債券のトークン化は、どんな可能性を開くんでしょう?


富良野:これが一番面白いかもしれません。例えば、レポ取引——政府債券を担保にした短期の資金調達——が瞬時にできるようになる。今は数日かかる処理が、リアルタイムで行える。しかも、担保の価値変動に応じて自動的に追加担保を要求したりできる。


Phrona:まるでお金と債券が生きているみたいですね。自分で判断して動き回る。でも、そこまで自動化が進むと、人間の役割はどうなるんでしょう?


富良野:興味深い問題ですね。技術が高度化しても、最終的な判断や政策決定は人間が行う必要がある。むしろ、ルーチンワークから解放されることで、より戦略的な思考に集中できるようになるかもしれません。


国境を越えるお金— 次世代コルレス銀行システムの可能性


Phrona:この統一台帳って、国際送金にはどんな影響があるんでしょう?今って、海外送金すると時間もかかるし手数料も高いですよね。


富良野:そうなんです。現在の国際送金は、複数の銀行が順番に処理していくから、時間もコストもかかる。でもトークン化された統一台帳があれば、すべての処理を一つの操作で済ませられるんです。


Phrona:でも、国によって法律や規制が違いますよね。そういう問題はどうやってクリアするんでしょう?


富良野:これは技術的な問題というより、政治的・法的な問題ですね。BISでは「プロジェクト・アゴラ」という実証実験で、7つの国の中央銀行と43の民間金融機関が協力して、実際にどうやって運用するかを検討しています。


Phrona:7つの国が協力するって、すごいですね。でも、データの管理とかプライバシーの保護とか、難しい問題がたくさんありそう。


富良野:まさにその通りです。特にデータの所在地規制——データを物理的にその国内に保管しなければならないという法律——がある国だと、技術的な解決策だけでは対応できない。暗号化技術でプライバシーを保護するだけでは不十分なケースもある。


Phrona:となると、技術の統一と、各国の主権の尊重のバランスが重要になってくるわけですね。一つの大きなシステムにするか、複数のシステムを連携させるか。


富良野:そう、まさに「統一の連続体」という概念があって、完全に一つのシステムにするのか、それとも別々のシステムを橋渡しで繋ぐのか、その中間のいろいろな選択肢がある。プロジェクト・アゴラでも、この辺りのバランスを慎重に検討しているようです。


AIとコンプライアンス— 金融犯罪対策の新境地


Phrona:さっきマネーロンダリングの話が出ましたが、新しいシステムでは金融犯罪対策はどうなるんでしょう?


富良野:これも面白い分野で、AI技術を活用した対策が期待されています。従来は単純なルールベースで怪しい取引を検出していたんですが、機械学習を使えばもっと精密に、しかも誤検出を減らしながら犯罪を見つけられる。


Phrona:誤検出っていうのは?


富良野:例えば、大きな金額の送金があった時に、自動的に「怪しい」と判定されちゃうケースです。でも実際は、正当な企業間取引だったりする。AIなら、取引のパターンや文脈を理解して、より適切に判断できる。


Phrona:でも、AIが判断を間違えた時はどうするんでしょう?人間の直感とか、経験みたいなものは無視していいんでしょうか?


富良野:良い質問ですね。だからこそ、AIは「コパイロット」として使われることが多いんです。人間の担当者をサポートして、明らかに問題ない取引は自動処理し、グレーゾーンのものは人間が最終判断する。


Phrona:なるほど。技術と人間の知恵を組み合わせるわけですね。でも、犯罪者の方も技術を悪用してくるでしょうから、いたちごっこにならないでしょうか?


富良野:確かにそのリスクはありますね。でも統一台帳なら、すべての取引記録が一箇所に集約されるから、従来よりも包括的な分析ができる。ネットワーク全体を俯瞰して、怪しい資金の流れを追跡しやすくなる。


実証から実装へ— 現実世界での取り組み


Phrona:これまでの話を聞いていると、とても壮大な構想ですが、実際にどこまで進んでいるんでしょうか?


富良野:意外と実践的な取り組みが始まっているんです。政府債券のトークン化では、すでに20以上の債券が発行されていて、総額40億ドルを超えています。9つの通貨で実験が行われている。


Phrona:実際に使ってみて、どんな結果が出ているんですか?


富良野:興味深いことに、発行コストは従来の債券とほぼ同じなんですが、流動性——売買のしやすさ——は改善されているようです。売買価格の差(スプレッド)が、従来債券の30ベーシスポイントに対して、トークン化債券は17ベーシスポイントまで縮小している。


Phrona:それって、投資家にとってはお得ということですよね。でも、まだ実験段階だから、本格的に導入されるまでには時間がかかりそう。


富良野:そうですね。技術的な問題よりも、法的な枠組みや規制の整備の方が課題かもしれません。ニューヨーク連邦準備銀行とBISの共同プロジェクト「パイン」では、中央銀行の金融政策運営をトークン化環境でシミュレーションしています。


Phrona:金融政策もデジタル化されるということですか?


富良野:例えば、中央銀行が金融機関に流動性を供給する時、スマートコントラクトで自動的に担保の価値を評価して、適切な金利を適用して、瞬時に資金を供給できる。しかも24時間365日稼働可能。


Phrona:便利そうですが、何か不安も感じます。そこまで自動化して、本当に安全なんでしょうか?


富良野:その不安は理解できます。だからこそ、BISは従来の金融システムの基盤——中央銀行の信頼性、二層構造の安定性——を維持しながら、技術的な恩恵だけを取り入れようとしているんです。革命ではなく、進化ですね。


私たちの暮らしはどう変わるのか


Phrona:こうした変化って、私たち一般の人にはどんな影響があるんでしょう?


富良野:直接的には、送金や決済がより早く、安く、確実になることでしょうね。国際送金で数日待つ必要もなくなるし、手数料も大幅に下がる可能性がある。


Phrona:でも、そういう技術的な恩恵だけじゃなくて、もっと根本的な変化もありそうですよね。お金に対する考え方自体が変わるというか。


富良野:良い指摘ですね。例えば、プログラマブルなお金があれば、「条件付き支払い」が簡単にできるようになる。保険金の自動支払いとか、契約条件が満たされた時の自動決済とか。


Phrona:それって、信頼関係の在り方が変わるということでもありますよね。人間同士の約束が、プログラムのルールに置き換わっていく。


富良野:確かに、そういう面もありますね。でも、プログラムのルールを作るのも、最終的にはそれを運用するのも人間です。技術は道具であって、それをどう使うかは私たち次第。


Phrona:とはいえ、すべての人がそうした技術にアクセスできるわけじゃないですよね。デジタル格差とか、新しい形の不平等が生まれないでしょうか?


富良野:それは重要な問題です。BISも、技術革新の恩恵が広く行き渡るよう、包摂性(インクルージョン)を重視しています。新しいシステムを作る時は、従来のシステムとの互換性も考慮しなければならない。


Phrona:結局、技術がどんなに進歩しても、それを使う人間の価値観や社会の在り方が一番重要ということでしょうか。


富良野:その通りだと思います。BISの報告書も、最終的には「社会の選択」だと言っていますからね。技術の可能性を活かしつつ、信頼と安定を維持する道を選ぶのか、それとも不安定だけれど新しい可能性に賭けるのか。


Phrona:私たちは今、歴史の転換点に立っているのかもしれませんね。お金の未来を決める、大切な時期に。




ポイント整理


  • トークン化統一台帳の核心概念

    • 統一台帳とは、中央銀行準備金、民間銀行預金、政府債券をすべてデジタルトークンとして一つのプログラマブルな基盤で管理する次世代金融インフラです。これにより、従来は別々に行われていたメッセージング、照合、決済を一つのシームレスな操作に統合できます。三つの重要な要素から構成される「三位一体」(トークン化された中央銀行準備金、商業銀行マネー、政府債券)が、信頼できるデジタル金融システムの基盤を形成します。

  • ステーブルコインの構造的限界

    • ステーブルコインは暗号資産エコシステムへの入口として設計されましたが、真の通貨システムの主軸となるには三つの重要な試験で不合格となります。統一性の観点では、発行者によって価値が異なるデジタル手形として機能し、パリティからの乖離が頻繁に発生します。弾力性では、現金前払い制約により、経済の需要に応じた柔軟な流動性供給ができません。完全性では、匿名性と国境を越えた自由な流通により、マネーロンダリングやテロ資金調達などの金融犯罪に悪用されるリスクが高くなります。

  • 従来金融システムの利点の継承

    • 新しいトークン化システムでも、中央銀行を中心とした二層構造の金融システムの基本設計は維持されます。中央銀行は最終決済資産として信頼できる準備金を提供し続け、民間銀行は実体経済への金融サービスを担います。この構造により、お金の統一性(どこでも同価値で受け入れられること)、弾力性(必要に応じた流動性供給)、完全性(金融犯罪防止)が確保されます。技術革新は既存システムの強固な基盤の上に構築され、革命ではなく進化的な改善を目指します。

  • クロスボーダー決済の革新

    • 現在の国際送金は、複数の銀行や決済機関を経由した逐次的な処理により、時間とコストがかかります。トークン化統一台帳では、支払い指示と口座更新を単一のトランザクションに統合し、すべてのステップをアトミック(同時実行)に処理できます。これにより、部分的な取引失敗のリスクを排除し、運用リスクと遅延を大幅に削減します。さらに、プラットフォーム上でのAML/CFT(マネーロンダリング防止/テロ資金調達防止)コンプライアンスツールにより、「設計による完全性」を実現します。

  • AI技術による金融犯罪対策の高度化

    • 従来のルールベースの取引監視に代わり、機械学習アルゴリズムを活用した精密な金融犯罪検出システムが導入されます。AIは取引パターンと文脈を理解して誤検出を削減しながら、真の不正取引をより効果的に発見できます。さらに、AIエージェントが人間のコパイロットとして機能し、疑わしい活動報告の作成などのルーチンタスクを自動化します。フェデレーテッドラーニング技術により、各国のデータ主権を尊重しながら国境を越えた犯罪ネットワークの検出も可能になります。

  • 政府債券市場のデジタル変革

    • 政府債券のトークン化により、証券決済の効率性が劇的に向上します。現在の複雑な仲介者ネットワークと分離された取引・決済プロセスが、プログラマブルプラットフォーム上でのアトミック決済に置き換わります。条件付き実行機能により、担保管理、証拠金調整、代金支払いと引き渡しが自動化されます。初期の実証実験では、トークン化債券の売買スプレッドが従来債券よりも改善されており(17bp vs 30bp)、発行コストは同程度を維持しています。

  • 中央銀行の触媒的役割

    • 次世代金融システムの実現には、中央銀行の積極的なリーダーシップが不可欠です。中央銀行は四つの重要な役割を担います:既存システムの重要機能をトークン化環境で再現するビジョンの提示、安全で健全な発展を確保する規制・法的枠組みの提供、トークン化金融システムに必要な基盤資産とプラットフォームの提供、そして官民連携による実験と業界努力の結集です。特に、トークン化された中央銀行準備金での決済は、システム全体の信頼性の要となります。

  • 実証プロジェクトからの学び

    • BISイノベーションハブの各種プロジェクトが実用化への道筋を示しています。プロジェクト・アゴラでは7カ国の中央銀行と43の金融機関が協力してクロスボーダー決済を実証し、プロジェクト・パインでは金融政策運営のトークン化をシミュレーションしています。プロジェクト・プロミッサでは多国間開発銀行の約束手形をトークン化し、手作業による処理の自動化を実現しています。これらの取り組みから、技術的実現可能性だけでなく、ガバナンスやデータ管理の重要性も明らかになっています。



キーワード解説


【トークン化(Tokenisation)】

実物資産や金融資産の請求権をプログラマブルプラットフォーム上にデジタル表現として記録するプロセス


【統一台帳(Unified Ledger)】

異なる種類の資産と取引を単一のプログラマブル基盤で管理する新しい金融市場インフラ


【アトミック決済(Atomic Settlement)】

複数の操作を同時実行し、すべてが成功するか、すべてが失敗するかのいずれかとなる決済方式


【お金の統一性(Singleness of Money)】

異なる発行者のお金が問答無用で同価値で受け入れられる性質


【弾力性(Elasticity)】

経済の需要に応じて流動性を柔軟に供給・調整できる能力


【完全性(Integrity)】

金融犯罪や不正取引を防ぐシステムの堅牢性


【スマートコントラクト(Smart Contracts)】

事前定義された条件が満たされた時に自動実行されるプログラムコード


【DvP(Delivery versus Payment)】

証券の引き渡しと代金支払いの同時実行


【コルレス銀行(Correspondent Banking)】

銀行間でノストロ・ボストロ勘定を通じて国際取引を仲介するシステム


【AML/CFT】

マネーロンダリング防止(Anti-Money Laundering)とテロ資金調達防止(Combating the Financing of Terrorism)


【フェデレーテッドラーニング(Federated Learning)】

各拠点でデータを分析し、集約情報のみを共有してプライバシーを保護する機械学習手法


【RTGS(Real-Time Gross Settlement)】

リアルタイム総額決済システム


【プロジェクト・アゴラ(Project Agorá)】

BIS主導で7カ国中央銀行と43金融機関が参加するクロスボーダー決済トークン化実証実験


【二層構造(Two-tier System)】

中央銀行と民間銀行の役割分担による現代金融システムの基本構造



本稿は近日中にnoteにも掲載予定です。
ご関心を持っていただけましたら、note上でご感想などお聞かせいただけると幸いです。
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