MAGAは、一つの主義でできていない──政治運動として見たMAGAの内部構造
- Seo Seungchul

- 8月2日
- 読了時間: 9分

シリーズ: 行雲流水
政治運動を評価するとき、私たちはたいてい、その運動が何を主張しているかを見る。しかしMAGAについては、その入り方がうまくいかない。
この運動の内部には、減税を求める富裕層と社会保障を必要とする労働者が同居している。自由市場を信じる勢力と保護主義を求める勢力、海外への軍事関与に積極的な安全保障強硬派と関与そのものに反対する勢力、宗教保守とテクノロジー系のリバタリアンが並んでいる。関税、社会保障、対外介入、企業規制のいずれについても、内部の対立は小さくない。
さらに、運動が掲げる政策の中身自体が、これまでに大きく動いてきた。それでも、離脱による分裂は起きていない。利害の異なる集団が同じ組織に残り続けるには、通常なら明確な妥協か、強い規律か、共通の利益構造のいずれかが必要になるはずだが、そのどれも教科書的な形では見当たらない。
したがって、主張の内容からこの運動を理解しようとする限り、説明はどこかで行き詰まる。見るべきなのは、何が主張されているかではなく、誰が何を作り、誰がそれを認めているかという分業の形である。
「分散型」という規定が抱える無理
MAGAを分散型の運動と呼ぶ議論がある。中央司令部も統一綱領も恒常的な指揮命令系統も持たず、各地の活動家やメディアが自律的に動いているのだから、たしかに古典的な中央集権型の政党とは異なる。
しかしこの規定は、別の観察と衝突する。運動の統一が、トランプという個人への忠誠に強く依存しているという観察である。分散したネットワークが、なぜ一人の人物の去就によって左右されるのか。二つをそのまま並べると、概念的な緊張が残ったままになる。
この緊張は、運動の中で何が分散し、何が集中しているのかを分けて特定すれば解ける。分散しているのは生産であり、集中しているのは認証である。
不満や言説や象徴を生み出す層には、インフルエンサー、宗教団体、地方の活動家、保守系メディア、オンラインの集まりがいる。戦術と政策を実験する層には、州政府、訴訟を担う団体、選挙運動、シンクタンク、保守系法律家のネットワークがある。人材と資金と専門知を供給する層には、共和党の組織、資金提供者、政策団体、行政経験者、選挙データを扱う組織が並ぶ。ここまではいずれも多中心的で、どこか一つが全体を設計してはいない。
これに対し、何が運動の正統な路線であり、誰が味方で誰が裏切り者かという最終的な認証は、トランプ個人へ集中している。したがってMAGAは、多中心的に生産され、人格的に裁定されるヘゲモニー形成のシステムとして規定するのが正確である。分散か集中かという二者択一を立てること自体が、この運動の理解を誤らせる。
政策が動いても運動が割れない理由
この構造は、外から見ると奇妙に映る現象を説明する。MAGAは政策の内容について、かなり大きな転換を経てきた。自由貿易から保護主義へ、財政保守から積極的な政府支出へ、ウォール街や大企業を中心に据える立場から反エリートの言説へ、対外的な軍事関与を支持する共和党から非介入的な傾向へ。一部は正反対に近い転換であるにもかかわらず、支持者の大規模な離脱を伴っていない。
政策原則が運動の同一性を担っている組織であれば、原則の転換は分裂の危険を伴う。原則を支持して集まった人々にとって、原則の変更は加入の前提そのものの破棄になるからだ。しかしMAGAでは、政策原則ではなく指導者への態度と敵対線の共有が同一性を支えている。誰を敵と見なすか、そしてトランプをどう見るかが所属の基準である以上、政策の中身は比較的自由に動かせる。
つまりこの運動は、政策の水準では可変的で、組織の水準では多中心的で、言説の生産では参加型でありながら、正統性の構造だけが人格的で集権的である。硬直した権威主義とも、純粋な水平型ネットワークとも異なる。周辺で絶えず変異が生み出され、中心がその変異を選別して公認するシステムだと言ってよい。この組み合わせが、MAGAの適応の速さと動員の力の両方を支えている。
支持と資金と受益のずれ
誰がMAGAを支持しているかを調べるだけでは、この運動の権力構造は見えない。少なくとも四つの主体を分けて問う必要がある。運動の社会的な基盤を構成するのは誰か。資金と組織と専門知を供給するのは誰か。政権獲得後に政策上の利益を受けるのは誰か。そして、運動の象徴的な正統性を裁定するのは誰か。
この四者は重なる部分を持ちながら、一致するとは限らない。アメリカン・ポリティカル・サイエンス・レビュー誌に掲載された分析は、トランプの資金基盤について、富裕層からの支援を相対的に弱めながらも依然として相当量を保ちつつ、非富裕層の新規献金者を大量に動員した連合だったと論じ、これをプルトポピュリズムと呼んでいる。大衆的な動員と富裕層の資金力は、対立する二つの陣営としてではなく、同じ連合の内部で結合しうる。
ここから導かれるのは、動員の量と政策形成への影響力が比例しないという点である。非富裕層の支持者が大規模に動員されても、政策の形成は資金提供者や政策専門家の影響を強く受けうる。労働者の文化的な要求が運動の前面で表象されても、経済政策上の利益がその層へ優先して配分されるとは限らない。逆に、政策形成に大きな影響を持つ組織であっても、MAGAとしての正統性はトランプの承認に依存する。
異質な要求を一つの物語で結ぶ働き、いわゆる等価性の連鎖が作り出すのは、要求どうしの政治的な共通性である。それは連合内部の発言力を均すものでも、資源の格差を解消するものでもない。動員された要求と、統治の段階で実際に政策へ翻訳された要求のあいだにどれだけの隔たりがあるか。ヘゲモニーの分析としては、この隔たりを別に測る必要が残る。
国際化という言葉に混ざっているもの
MAGAの国際的な広がりを、アメリカから他国への一方向の輸出として理解すると、実態を取り逃がす。
まず、「MAGAの国際化」という一語の中に、性質の異なる現象が少なくとも四つ混ざっている。語彙やスローガンが国外へ拡散すること。選挙やSNSの戦術が模倣されること。政党、活動家、資金、メディアが組織として連携すること。そして政権どうしが外交や政策で協調すること。これらは同じ現象ではなく、同じ条件で起きるわけでもない。
次に、影響の向きが一方向ではない。ハンガリーの非自由主義的な統治、欧州の反移民政治、ラテンアメリカの右派運動、宗教保守の国際的なネットワークは、いずれもトランプ以前から存在していた。ヨーロッパ政治学コンソーシアムの分析は、CPACのような国際会議を介して、アメリカ、欧州、ラテンアメリカの右派勢力が、主権を前面に出す言説と国境を越えたアイデンティティを組み合わせながら、言説や戦術を相互に学習している様子を描いている。オルバーン主義をはじめ、アメリカの外で発達した手法がMAGAへ流入した面もある。
したがって、実際に起きているのは輸出よりも相互翻訳に近い。各国に固有の不満と運動がまず存在し、MAGAがそれを世界的な潮流の一部として可視化し、会議やメディアを通じて戦術と言説が循環し、各国の運動がそれを自国の歴史や宗教や制度へ置き換え、現地化された成功例が再び別の国へ影響を返す。MAGAは国際急進右派の唯一の起源ではなく、既存のネットワークを再編して増幅する規模の大きなハブである。
そこで形成されているのは、単一の世界的な人民ではない。それぞれの国に固有の敵対線を持つ複数の人民が、グローバル・エリートや移民といった共通の敵の像を通じて、闘争の物語を翻訳し合っている構造である。国内で見た人格的な裁定の一極集中は、国際的な水準では再現されない。各国がそれぞれの裁定者を持ちながら、素材だけを共有している。
「成功」を分解する
MAGAは成功した、という前提で語られることが多い。しかし成功には複数の意味がある。選挙に勝つこと、共和党という組織を掌握すること、公共の言説を変えること、政治のアジェンダを設定すること、支持者の集合的なアイデンティティを形成すること、政策を実現すること、安定して統治すること、指導者が退場した後も持続すること。これらは別々の達成である。
明確に成功したと言えるのは、選挙での動員、共和党の再編と掌握、アジェンダの設定、公共言説の変更、強い帰属感の形成、そして国際的な右派ネットワークの再編と増幅である。
一方で、同じ意味で成功したとは言えない領域が残る。政策としての一貫性、統治能力、支持者の要求と政策成果の整合、長期的な社会的多数派の形成、指導者退場後の持続性である。とくに最後の点は、この記事の冒頭で見た構造から直接導かれる。認証の機能が一人に集中している以上、その人物が退場したときに誰が引き継ぐのかというルールが、運動の内部に存在しない。周辺でどれだけ多様な言説や戦術が生産されていても、それを正統だと認める基準そのものが消える。
ここに、この運動の構造がもたらす最も重要な帰結がある。適応の速さと持続の難しさは、別々の原因から来ているのではない。一つの構造が、条件によって異なる顔を見せているだけである。ヘゲモニーを獲得することと、それを持続可能な統治の秩序へ変換することは、別の課題として区別されなければならない。
ポイント整理
分散と集中の所在を分ける
分散しているのは言説と戦術の生産、集中しているのは正統性の認証である
多中心的に生産され、人格的に裁定されるシステム、と規定するのが正確である
政策の可変性と正統性の硬直
同一性を支えているのが政策原則ではなく指導者への態度であるため、政策転換のコストが低い
周辺で変異が生まれ、中心がそれを選別して公認する組み合わせが、適応力と動員力を支えている
四つの主体のずれ
社会的基盤、資源供給者、政策受益者、象徴的裁定者は一致しない
等価性の連鎖は要求の共通性を作るが、連合内部の発言力や資源の格差までは均さない
国際化に混ざる四つの現象
語彙の拡散、戦術の模倣、組織的連携、政府間協調は別の現象である
影響は双方向であり、MAGAは起源ではなく再編と増幅のハブである
成功の分解
選挙動員、党の掌握、アジェンダ設定、帰属形成については成功と言える
政策的一貫性、統治能力、指導者退場後の持続性は、同じ意味では成功していない
キーワード解説
【プルトポピュリズム】
非富裕層による広範な小口献金と、富裕層による大口献金や組織的支援が、対立する陣営としてではなく同じ政治連合の内部で結合している状態を指す語。大衆的な動員と富の集中は排他的な関係にないことを示す概念として用いられる。
【等価性の連鎖】
エルネスト・ラクラウの用語。労働、移民、文化、地域格差など、本来別々の問題や不満を、共通の敵対関係の中に置くことによって、政治的に等価なものとして結びつける働きを指す。結びつけるのは要求の政治的な意味であり、要求の内容や連合内部の力関係ではない。
【CPAC】
Conservative Political Action Conferenceの略称。アメリカの保守派が開催してきた大規模な政治集会で、近年はハンガリーなど国外でも開催されている。国際的な右派勢力が言説や戦術を相互に学習する場の一つとして機能している。
