真夏の暑さが私たちを甘いもの中毒にしている? ──気候変動が変える食生活の意外な真実
- Seo Seungchul

- 9月25日
- 読了時間: 7分

シリーズ: 知新察来
◆今回のレポート:Laura Paddison "Scientists find a surprising reason why people are eating more sugar" (CNN Climate, 2024年9月8日)
概要:アメリカの研究により、気温上昇が砂糖消費量の増加と関連していることが判明。気候変動が食行動に与える影響を分析した研究結果を報告
猛暑の夏、コンビニでアイスクリームやかき氷を手に取る回数が増えていませんか?実は、その行動には科学的な理由があることが分かってきました。アメリカの最新研究によると、気温が上がるほど、私たちは甘いものを求めるようになる傾向があるのです。
この発見は、気候変動が私たちの健康に与える影響を考える上で重要な視点を提供しています。単純に「暑いから冷たいものが欲しくなる」という話ではありません。気温の上昇が、私たちの食行動そのものを変化させ、糖分摂取量を押し上げている可能性があるのです。
今回は、この興味深い研究結果をもとに、暑さと食欲の関係、そして気候変動が私たちの日常生活に与える予想外の影響について考えてみたいと思います。果たして、私たちは暑さにどう対応していけばよいのでしょうか。
暑さと甘いものの意外な関係
富良野:この研究結果、最初は「そりゃ暑いときはアイスクリーム食べたくなるでしょ」って思ったんですけど、よく読んでみると、もう少し複雑な話なんですね。
Phrona:そうなんです。単純に冷たいものが欲しいというより、暑さそのものが私たちの食欲や食べ物の選択に影響を与えているという話で。体が暑さに対処するために、何か特別なエネルギー源を求めているのかもしれませんね。
富良野:研究では、気温が1度上がるごとに砂糖の消費量が一定割合増加するという結果が出ているんですよね。これは偶然ではなく、何らかの生理学的なメカニズムがあると考えられます。
Phrona:私が気になったのは、これって現代特有の現象なのかということです。昔の人たちも暑いときは甘いものを欲していたのか、それとも現代の食環境だからこその反応なのか。
富良野:いい視点ですね。確かに、昔は今ほど簡単に甘いものが手に入らなかったし、そもそも選択肢自体が限られていた。現代は、コンビニに行けば24時間いつでも砂糖たっぷりの飲み物やお菓子が買えますからね。
Phrona:それに、エアコンの普及も関係しているかもしれません。室内と屋外の温度差が激しくなると、体の調節機能が混乱して、より強い刺激を求めるようになるとか。
体のメカニズムから見た暑さと糖分
富良野:生理学的に考えると、暑さで体が疲労しているときに、手っ取り早くエネルギーを得られる糖分を欲するのは理にかなっているんです。糖分は即座に血糖値を上げて、疲れた体に活力を与えてくれますから。
Phrona:でも、それって一時的な解決策でしかないですよね。糖分を摂取した後の血糖値の急降下で、結果的にもっと疲れを感じることになりそう。
富良野:まさにそこが問題で、暑さによるストレス反応として甘いものを摂取し、それがまた新たなストレスを生むという悪循環が生まれる可能性があります。特に現代は、精製された砂糖が大量に含まれた食品が身近にありますから。
Phrona:研究結果を見ると、この傾向は全体的なものみたいですけど、個人差もありそうですね。暑さに強い人と弱い人では反応も違うでしょうし、文化的な食習慣の影響もあるんじゃないでしょうか。
富良野:確かに。日本だと、暑いときには冷たい麦茶や氷を使った食べ物を好む傾向がありますが、これも一種の糖分摂取なのかもしれませんね。かき氷のシロップとか、冷やし中華の甘いタレとか。
Phrona:面白いのは、私たちが意識的に選んでいるつもりでも、実は気温という環境要因に行動を左右されているということです。自由意志と思っていた食の選択が、実は気候に操られているみたいで。
気候変動の隠れた影響
富良野:この研究が示しているのは、気候変動の健康への影響は熱中症や脱水症状だけじゃないということですね。もっと日常的で、気づきにくい形で私たちの生活に入り込んでいる。
Phrona:そうですね。糖分の過剰摂取は肥満や糖尿病、心血管疾患のリスクを高めますから、気候変動が間接的にこれらの病気の増加につながっている可能性もあります。
富良野:政策的に考えると、これは複雑な課題です。気候変動対策と同時に、食環境の改善も必要になってくる。単純に「甘いものを控えましょう」では解決しない構造的な問題かもしれません。
Phrona:個人レベルでは、この仕組みを知っているだけでも違いますよね。暑い日に無性に甘いものが欲しくなったとき、それが気温の影響だと理解していれば、少し立ち止まって考えることができる。
富良野:ただ、完全に抑制するのも現実的じゃないし、健康的じゃないかもしれません。むしろ、暑さに対する体の自然な反応を理解した上で、より良い選択肢を用意しておくことが大切なのかも。
Phrona:果物を冷やしておくとか、甘さ控えめの冷たい飲み物を準備するとか。体の欲求を完全に否定するんじゃなくて、上手に付き合っていく知恵が必要ですね。
未来への対応策を考える
富良野:長期的には、都市設計や建築設計も関係してきそうです。ヒートアイランド現象を緩和して、そもそも暑さを感じにくい環境を作ることができれば、糖分摂取の増加も抑えられるかもしれません。
Phrona:それに、食品業界の責任も大きいと思います。暑い季節に合わせて健康的な選択肢を提供するとか、砂糖の代わりになる自然な甘味を使った商品を開発するとか。
富良野:研究データを見ると、この傾向は今後も続きそうですからね。気温上昇が続く限り、私たちの食行動への影響も継続する。適応策を考えていく必要があります。
Phrona:でも、これって人間の適応能力の現れでもあるんですよね。厳しい環境変化に対して、体が何とか対処しようとしている。完璧な対処法じゃないかもしれないけど、生き抜こうとする力の表れというか。
富良野:確かに。問題はその適応が現代の食環境とマッチしていないことかもしれません。昔なら自然の甘味で十分だったのが、今は人工的で過度に甘い食品があふれている。
Phrona:結局、私たち一人ひとりが、自分の体と環境の関係をもっと意識的に観察していく必要があるのかもしれませんね。暑さと食欲の関係を理解して、賢く付き合っていく。
ポイント整理
気温上昇と糖分摂取の相関関係
研究により、気温が1度上昇するごとに砂糖消費量が一定割合増加することが判明。これは単純な嗜好の問題ではなく、生理学的なメカニズムが関与している可能性が高い。
現代の食環境が増幅する問題
昔と比べて甘い食品が手軽に入手できる現代では、暑さによる糖分欲求がより簡単に満たされる環境にある。これが過剰摂取につながりやすい状況を生み出している。
悪循環のリスク
暑さによるストレスで糖分を摂取し、その後の血糖値変動でさらなるストレスが生まれる可能性。短期的な解決策が長期的な健康問題を引き起こすリスクがある。
気候変動の隠れた健康影響
熱中症などの直接的な影響だけでなく、食行動の変化を通じた間接的な健康への影響が存在する。肥満、糖尿病、心血管疾患のリスク増加につながる可能性。
個人と社会両レベルでの対策の必要性
個人の意識改革だけでなく、都市設計、食品業界の取り組み、政策レベルでの包括的な対応が求められる構造的な課題である。
適応的な対処法の模索
体の自然な反応を完全に抑制するのではなく、より健康的な選択肢を用意し、暑さと食欲の関係を理解した上で賢く付き合っていく必要がある。
キーワード解説
【ヒートアイランド現象】
都市部が周辺地域より高温になる現象
【血糖値の急降下】
糖分摂取後に起こる血糖値の急激な低下
【生理学的メカニズム】
体の機能や反応の仕組み
【環境要因】
私たちの行動に影響を与える外部環境の条件
【適応能力】
環境変化に対して体や行動を調整する能力
【構造的な課題】
個人努力だけでは解決できない社会システム全体の問題
【精製された砂糖】
自然の状態から加工された純度の高い砂糖
【自然な甘味】
果物など天然由来の甘さ
【食環境】
食べ物の入手しやすさや選択肢などの環境
【包括的な対応】
複数の分野や視点を含めた総合的な取り組み