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隠れた高給職の世界──誰も教えてくれない年収1000万円超えの仕事たち

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シリーズ: 知新察来


◆今回のピックアップ記事:Jack Kelly "Hidden High-Paying Jobs That People Don't Know About" (Forbes, 2025年4月27日)

  • 概要: 一般的に知られていない高給職業を紹介。石油地質学者、クオンツ、声優、原子力発電所運転員、倫理的ハッカーなど、専門性が高く年収1000万円を超える職業の実態と、これらが隠れている理由を分析。



ソフトウェア開発者の年収約2000万円、投資銀行家の年収約1500万円。こうした数字は多くの人が知っています。でも、石油地質学者が年収1500万円から3000万円、クオンツが年収1500万円から5000万円、声優が年収800万円から4000万円を稼いでいることを知っている人はどれだけいるでしょうか。


私たちの周りには、名前すら聞いたことのない高給職が数多く存在しています。これらの仕事は高度に専門化されているか、特定の業界に閉じていることが多く、一般的な転職市場では見えにくい存在です。原子力発電所の運転員、倫理的ハッカー、最高コンプライアンス責任者といった職業は、社会の重要なインフラを支えながらも、その高い報酬はほとんど知られていません。


富良野とPhronaが、Forbes誌が明らかにしたこれらの隠れた職業について語り合います。なぜこれらの仕事は見えないのか、そして私たちはどうすればこうした機会を見つけられるのか。従来のキャリアパスにとらわれない新しい可能性を、一緒に探っていきましょう。




見えない高給職の正体:なぜ「隠れて」いるのか


富良野:Forbes の記事を読んで驚いたんですが、石油地質学者って年収1500万円から3000万円なんですね。地質学なんて地味な分野だと思ってました。


Phrona:地質学が地味だなんて失礼ですよ。でも確かに、大学で地質学を専攻している人って周りにあまりいませんよね。なぜこんなに高給なのに知られていないんでしょう。


富良野:記事によると、専門性が極めて高いことと、地理的に限定されることが理由みたいです。石油や天然ガスの採掘地域の近くに住んでいないと、そもそもこの仕事の存在を知る機会がない。


Phrona:ああ、なるほど。私たちが普段接触する職業って、都市部のオフィスワーカーが中心ですもんね。エネルギー業界で働く人たちとは生活圏が違う。


富良野:それに、全米でたった3万人しかいないって希少性も高給の理由でしょうね。需要はあるけど供給が限られている典型例です。


Phrona:でも考えてみると、私たち、エネルギーは毎日使っているのに、それを見つけて採掘する人たちのことは全然知らない。変な話ですよね。


富良野:まさに見えないインフラを支える人たちですね。


金融業界の隠れた天才たち


Phrona:クオンツという職業も初めて知りました。年収1500万円から5000万円って、投資銀行家より稼いでる人もいるんですね。


富良野:クオンタティブアナリスト、数量分析の専門家ですね。ヘッジファンドや投資銀行で複雑なアルゴリズムを開発して、取引戦略を最適化する仕事らしいです。


Phrona:でも、なんでこんなに稼げるんですか?


富良野:記事によると、彼らが開発するモデルが数十億円規模の利益を生み出すからだそうです。シタデルやジェーン・ストリートみたいな一流企業では、新卒でも年収3000万円。優秀なクオンツなら年収1億円から10億円稼ぐ人もいるって。


Phrona:10億円?それってもはや別世界の話ですね。でも、そんなに重要な仕事なのに、なぜ知られていないんでしょう。


富良野:技術的複雑さと、エリート金融界の閉鎖性が理由でしょうね。PhD レベルの数学や物理学の専門知識が必要で、しかも限られた金融機関でしか働けない。


Phrona:確かに、数学や物理学の博士号を持っている人って、大学で研究者になるものだと思い込んでました。金融業界という選択肢があるなんて。


富良野:ルネッサンス・テクノロジーズのメダリオン・ファンドなんて、トップクオンツに数億円のボーナスを払ってるって話もあります。もちろん、そこまで行くのは例外中の例外でしょうけど。


声という見えない資産


Phrona:声優さんが年収800万円から4000万円というのも意外でした。アニメ声優さんって、もっと厳しい業界だと思ってたんです。


富良野:CNBCの報道によると、Fiverr というプラットフォームで100万ドル、つまり約1億5000万円稼いだ声優さんもいるそうです。


Phrona:1億5000万円?一体どんな仕事をしたんでしょう。


富良野:コマーシャル、オーディオブック、ビデオゲーム、アニメ映画。特に大手企業の全国キャンペーンや人気フランチャイズのレギュラー役だと、相当な額になるみたいですね。


Phrona:SAG-AFTRA みたいな組合があって、再放送のたびに収入が入る仕組みもあるんですよね。でも、なぜ声優業界は注目されにくいんでしょう。


富良野:記事では、華やかなスクリーン俳優に注目が集まりがちで、声の仕事は影に隠れてしまうからだと説明してます。でも実際は、専門的な発声訓練と業界特有のネットワーキングが必要な高度な職業なんです。


Phrona:声って、確かに替えの利かない個人の資産ですもんね。


危険と責任が生む価値:原子力の現実


富良野:原子力発電所の運転員が年収1200万円から2000万円というのは、リスクを考えると納得できます。


Phrona:でも、どんなリスクがあるんですか?記事では「ホーマー・シンプソンみたいじゃない」って書いてありましたけど。


富良野:原子炉の制御を誤ったり、外部からの事故があったりすると、メルトダウンや放射能漏れの危険がある。運転員だけでなく、周辺住民の安全にも関わる仕事ですから。


Phrona:そんな重大な責任を負っているのに、全米でたった5000人しかいないんですね。


富良野:広範囲な訓練、セキュリティ・クリアランス、高度な安全プロトコルの習得が必要だからでしょう。それに、一般の人は原子力エネルギーに対して漠然とした不安を持っているから、この職業の存在も知られにくい。


Phrona:でも電力の約20%は原子力発電所から来ているんですよね。私たちの生活を支えている人たちなのに、見えない存在になってしまっている。


富良野:技術的で隔離された環境で働くことも、一般の認知度を下げている要因かもしれませんね。


空の安全を守る人たち


Phrona:航空管制官も年収1300万円から2200万円で、相当なプレッシャーの仕事ですよね。


富良野:飛行機の離着陸や飛行経路を管理して、高圧的な環境で安全を確保する。一つの判断ミスが大事故につながりかねない仕事です。


Phrona:最近の航空機事故のニュースを見ると、この仕事の重要性がよく分かります。でも、それがストレスにもなるでしょうね。


富良野:記事でも、最近の航空機災害がこの職業を敬遠させる要因になっているかもしれないと指摘してます。高給だけど、精神的負担も大きい。


Phrona:でも、誰かがやらなければ航空システムが成り立たない。社会にとって絶対に必要な仕事ですよね。


デジタル時代の新しい守護者:善良なハッカーたち


富良野:倫理的ハッカーという職業も面白いですね。年収1400万円から3000万円で、いわゆる「ホワイトハット・ハッカー」として企業のシステムを守る。


Phrona:企業に雇われて、その企業をハッキングするんですか?なんだか逆説的で面白い。


富良野:サイバー攻撃をシミュレーションして、悪意のあるハッカーが見つける前に脆弱性を発見する仕事です。2024年にサイバー攻撃が30%増加しているそうで、需要が急増してるんです。


Phrona:フリーランスのコンサルタントとして働く人も多いんですよね?


富良野:そうですね。企業が社内にセキュリティ専門家を抱えるより、必要な時だけ外部の専門家に依頼する方が効率的なケースも多いでしょう。


Phrona:でも、この職業が知られていないのはなぜでしょう。


富良野:技術的な専門用語が多いことと、比較的新しい職業だからじゃないでしょうか。「ハッカー」という言葉にネガティブなイメージを持つ人も多いですし。


Phrona:確かに「ハッカー」って聞くと、悪いことをする人だと思ってしまいがちですね。実際は企業を守る人たちなのに。


コンプライアンスという見えない盾


富良野:最高コンプライアンス責任者、CCOも隠れた高給職ですね。年収1400万円から2500万円以上。


Phrona:コンプライアンスって、法的な規制を守る仕事ですよね。でも、なんでそんなに高給なんでしょう。


富良野:特に金融、医療、技術といった高度に規制された業界では、法令違反が会社の存続に関わる問題になるからです。一つのミスで数百億円の罰金や事業停止もありえる。


Phrona:そう考えると、会社の法的リスクを管理する人の価値は計り知れませんね。


富良野:MBAや法学位を持つ人が重宝されるし、会社の規模や複雑さによってはさらに高額になる。でも、この仕事は企業の裏方的な存在だから、一般の人には見えにくいんです。


数字で人生を読む


Phrona:アクチュアリーという職業も初めて聞きました。年収1340万円から2500万円。


富良野:保険会社や年金基金で、統計モデルを使って金融リスクを評価する仕事です。死亡率や災害の可能性を予測したりする。


Phrona:人の生死を数字で扱うなんて、なんだか複雑な気持ちになりますね。


富良野:記事では「華やかさや刺激に欠ける」という評判が、求職者を遠ざけているかもしれないと指摘してます。でも、社会の安定に欠かせない重要な仕事です。


Phrona:地味だけど高給、という典型例ですね。


身近すぎて見えない専門家


富良野:意外だったのは、近所の歯列矯正医が年収2000万円から4000万円以上稼いでいるということ。


Phrona:えっ、そんなに?確かに矯正治療って高額ですけど。


富良野:ブレースやアライナーを使った歯の矯正治療で、多くの場合は個人開業医として働いてる。需要が高くて、専門性も必要だから高収入になるんでしょうね。


Phrona:身近すぎて、かえって「すごい職業」だと思わなかったかも。でも考えてみると、高度な医学知識と技術が必要な専門職ですもんね。


富良野:まさに「隠れた高給職」の典型例です。毎日のように看板を見かけるのに、その収入水準は知らない。


見えない機会を見つける方法:発想の転換


Phrona:でも、こういう隠れた職業を実際にどうやって見つけたらいいんでしょう?


富良野:記事の最後で、ジャック・ケリーさんが面白いアドバイスをしてますね。「箱の外で考える」こと。大企業のブランド名だけに固執せず、様々な業界や分野を研究しろって。


Phrona:確かに、就職活動の時って、名前を知っている大企業ばかり見てしまいがちですもんね。


富良野:「興味深く、ユニークで、時には愛されていない会社」を探せって表現が印象的でした。みんなが避けがちな分野にこそ、チャンスがあるかもしれない。


Phrona:愛されていない会社って、ちょっと可哀想な表現ですけど、でも確かにそういう会社の方が人材不足で、高い給与を提示してくれるかもしれませんね。


富良野:それに、地域的な偏りを考慮することも重要でしょうね。石油業界なら産油地域、原子力なら発電所がある地域。その地域特有の高給職があるはずです。


給与の地域格差を理解する


Phrona:記事で重要だと思ったのは、同じ職業でも地域によって給与が大きく違うという指摘です。


富良野:ニューヨークとオクラホマでは、同じスキルでも収入が大きく変わる。銀行のVPでも、勤務する金融機関によって待遇が違うって話ですね。


Phrona:これって給与交渉の時に知っておくべき情報ですよね。自分が不当に安い給与で働いていないか判断するために。


富良野:そうです。隠れた高給職を見つけるだけでなく、同じ職業でも最適な場所や会社を選ぶ視点が大切ですね。


Phrona:情報収集がいかに重要かということですね。


定年世代という隠れた可能性


富良野:実は「箱の外で考える」アプローチって、日本の定年世代にこそ大きなチャンスがあるんじゃないかと思うんです。


Phrona:定年世代ですか?一般的には年金生活とか、警備員のイメージが強いですけど。


富良野:そこが盲点なんですよ。40年近く働いてきた経験と知識、それに築いてきた人脈って、実は相当な価値があるはず。でも多くの人がそれを活かしきれていない。


Phrona:確かに。例えばどんな可能性があるんでしょう?


富良野:元銀行員の方なら、フィンテック企業のリスク管理アドバイザー。元製造業の管理職なら、スタートアップ企業の事業運営コンサルタント。経験値という無形資産を新しい分野で活かす発想ですね。


Phrona:なるほど。ベンチャー企業の若い起業家たちには足りない、現実的な事業運営の知識を提供できるということですね。


富良野:それに地域格差も重要な要素です。東京では競争が激しくても、地方都市では同じスキルを持つ人材が不足している。IT知識を持つ60代の方が、地方企業のDX推進を支援するとか。


Phrona:生活コストも安いし、東京での年金生活より豊かに暮らせるかもしれませんね。


富良野:廃棄物処理や介護といった「愛されていない」分野も狙い目です。社会に絶対必要だけど若い人が敬遠しがち。でも環境規制や高齢化で需要は急増してる。


Phrona:定年世代の強みは時間的余裕もありますよね。じっくりと関係性を築けるし、急がなくていいのはむしろアドバンテージかも。


富良野:「もう年だから」という思い込みを捨てて、自分の価値を客観的に評価し直す。これも立派な「箱の外で考える」アプローチだと思います。



 

ポイント整理


  • 隠れた高給職の特徴

    • 石油地質学者(年収1500万円〜3000万円)、クオンツ(年収1500万円〜5000万円)、声優(年収800万円〜4000万円)など、高度な専門性を要求される職業が高収入を実現している。

  • 隠れている理由

    • 地理的制約(エネルギー業界は特定地域に集中)、技術的複雑さ(PhD レベルの専門知識が必要)、業界の閉鎖性(金融エリート層に限定)、一般認知度の低さ(裏方的な仕事)が主な要因。

  • リスクと責任の対価

    • 原子力発電所運転員(年収1200万円〜2000万円)、航空管制官(年収1300万円〜2200万円)など、高いリスクと社会的責任を伴う職業に高額報酬が設定されている。

  • 新興分野の機会

    • 倫理的ハッカー(年収1400万円〜3000万円)、最高コンプライアンス責任者(年収1400万円〜2500万円)など、デジタル化と規制強化により新たに生まれた高給職が存在する。

  • 身近な専門職の再評価

    • 歯列矯正医(年収2000万円〜4000万円)、アクチュアリー(年収1340万円〜2500万円)など、身近だからこそ見落とされがちな高収入専門職がある。

  • 地域格差の重要性

    • 同一職業でも勤務地域や所属組織により収入が大幅に変動するため、戦略的な就職・転職活動が必要。Forbes 専門家は「箱の外で考える」アプローチを推奨。



キーワード解説


石油地質学者

地震波探査技術を用いて石油・天然ガス鉱床を発見する地球科学の専門家


【クオンツ(定量分析専門家)

数学・物理学の高度な知識でアルゴリズム取引戦略を開発する金融業界の数学者


【倫理的ハッカー(ホワイトハット)

企業のサイバーセキュリティを守るため合法的に侵入テストを行う専門家


【原子力発電所運転員

核分裂プロセスを制御し電力生成の安全性を確保する高度技術者


【最高コンプライアンス責任者(CCO)

企業の法令遵守と規制リスク管理を統括する経営幹部


【アクチュアリー

統計学と確率論を用いて保険・年金の金融リスクを数値化する専門家


【航空管制官

空港や管制区域で航空機の安全な運航を指揮・管理する専門職


【声優(ボイスオーバーアーティスト)

商業広告・アニメ・ゲームなどで音声による表現を提供する専門家


【歯列矯正医(オーソドンティスト)

歯並びや噛み合わせの治療を専門とする歯科医師



本稿は近日中にnoteにも掲載予定です。
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