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AIが変える人材戦略――「その人らしさ」を見つめ直す時代へ

更新日:2025年11月26日

シリーズ: 知新察来


◆今回のピックアップ記事:David Michels "AI Is Changing Work. Is Your Talent Strategy Evolving Too?" Forbes, 2025年7月22日)

  • 概要:AI時代における人材戦略の変革について、「アーキタイプ効果」という従業員の動機を6つのタイプに分類する理論を紹介。従来の画一的な人材管理から、個々の特性に応じたアプローチへの転換を提案している。



企業って、お客様のことは細かく分析するのに、なぜか社員のことになると「みんな出世したいはず」って決めつけがちですよね。でも本当にそうでしょうか?


最近、Bain & CompanyのJames Root氏が提唱する「アーキタイプ効果」という考え方が注目されています。これは、働く人の動機や価値観を6つのタイプに分類して、それぞれに合った育成や支援をしていこうというものです。


AIが人事領域にも本格的に入ってきた今、「平均的な社員像」から脱却して、一人ひとりの特性に目を向ける時代がやってきているのかもしれません。富良野さんとPhronaさんが、このテーマについて語り合います。二人の視点の違いから、組織と個人の新しい関係性が見えてくるはずです。




分類することの光と影


富良野:Phronaさん、この「アーキタイプ効果」って面白いですよね。従業員を6つのタイプに分けるっていう発想。ギバー、オペレーター、エクスプローラー、アルチザン、ストライバー、パイオニア......確かに、みんなが同じ動機で働いてるわけじゃないのは当たり前なんですけど。


Phrona:ええ、でも富良野さん、人を分類するって、ちょっと怖くないですか? 私たちって、そんなにきれいに箱に収まるものなのかな。朝はアルチザンな気分で仕事の質にこだわってたのに、午後になったらエクスプローラーになって新しいことに挑戦したくなったり......。


富良野:あー、確かに。僕だって、プロジェクトによって全然違う顔を見せてる気がします。クライアントのために頑張るギバーな時もあれば、新しい方法論を試したくてウズウズするパイオニアな時もある。


Phrona:そうそう。でもね、だからこそ、この分類が意味を持つのかもしれません。完璧に当てはめるんじゃなくて、その人の中にある複数の傾向を理解するための手がかりとして使えば。


富良野:なるほど、診断ツールじゃなくて、対話のきっかけとして使うってことですか。


Phrona:ええ。私、昔の職場で「あなたはこういうタイプだから、こういう仕事が向いてます」って決めつけられて、すごく窮屈だったんです。でも、もし「あなたの中にはアルチザンな面とエクスプローラーな面があるみたいだけど、今はどっちを大切にしたい?」って聞かれたら、全然違ったと思う。


AIが見せる新しい可能性


富良野:そこでAIの出番ってわけですね。記事では、AIが個人のスキルや経験、動機を分析して、最適なキャリアパスを提案できるって書いてあります。


Phrona:でも待って、AIって結局パターン認識じゃないですか。私たちの複雑さや揺らぎを、本当に理解できるのかしら。


富良野:うーん、完全に理解するのは無理でしょうね。でも、人間のマネージャーだって、部下のことを完璧に理解してるわけじゃない。むしろAIの方が、偏見なく膨大なデータから傾向を見つけられるかもしれません。


Phrona:偏見がないって言うけど、AIの学習データに偏りがあったら? たとえば、これまでの人事評価が「ストライバー型」を優遇してきたとしたら、AIもそれを正しいパターンとして学習しちゃいますよね。


富良野:あ、それは鋭い指摘だな。結局、AIを使う側の人間が、どういう価値観でシステムを設計するかが重要ってことか。


Phrona:そうなんです。でもね、逆に考えると、AIがあることで今まで見えなかったパターンが見えるかもしれない。たとえば、ギバー型の人が実は会社の業績にすごく貢献してるとか、アルチザン型の人がいるチームの方が革新的なアイデアが生まれやすいとか。


「平均的な社員」という幻想


富良野:記事の著者が面白いエピソードを紹介してましたよね。インターンの子が「昇進よりも創造性を重視したい」って言って、それで自社の人材戦略の偏りに気づいたって。


Phrona:私、そのインターンの気持ちすごくわかります。出世って、みんなが目指すべきゴールみたいに扱われるけど、本当にそうなのかなって。


富良野:確かに、従来の組織って「上に行くこと」が成功の証みたいな価値観がありましたからね。でも、専門性を深めたい人もいれば、横のつながりを大切にしたい人もいる。


Phrona:そうそう! 私の友人で、管理職になることを断った人がいるんです。彼女はアルチザン型で、現場で手を動かすことに喜びを感じてた。でも周りからは「もったいない」って言われて......。


富良野:もったいないって、誰にとってですかね。本人が幸せじゃなければ、組織にとってもマイナスじゃないですか。


Phrona:ええ、でも組織の評価システムって、まだまだ一本道なところが多いんですよね。昇進しないと給料も上がらないとか。


富良野:そこを変えていかないと、いくらアーキタイプを理解しても意味がない。エクスプローラー型の人には新規事業の機会を、アルチザン型の人には技術を極める道を、それぞれに見合った評価と報酬を用意しないと。


インスピレーションという新しい指標


Phrona:記事の最後に「満足」じゃなくて「インスピレーション」を引き出すって書いてありましたよね。これ、すごく大事な視点だと思うんです。


富良野:インスピレーション......内発的なやる気ってことですか。確かに、満足してるだけじゃ、新しいものは生まれないかもしれない。


Phrona:でも、インスピレーションって測れるものなのかしら。満足度なら、アンケートで数値化できるけど。


富良野:難しいですよね。でも、たとえば「最近、仕事中にワクワクしたことは?」とか「新しいアイデアを思いついた瞬間は?」みたいな質問から探っていけるかもしれません。


Phrona:ああ、それいいですね。数字じゃなくて、ストーリーから理解していく。AIも、そういう定性的なデータを分析できるようになってきてますし。


富良野:そうか、AIって定量データだけじゃなくて、面談の記録とか、日報のテキストとか、そういうものからも傾向を読み取れるんだ。


Phrona:ええ。でも、そこまでいくと、ちょっとプライバシーの問題も出てきそう......。どこまで組織に自分の内面を見せるか、っていう。


組織と個人の新しい関係へ


富良野:結局、このアーキタイプ効果って、組織と個人の関係を見直すきっかけなのかもしれませんね。


Phrona:どういうことですか?


富良野:今までは、組織が用意した枠に個人が合わせる感じだったじゃないですか。でも、これからは個人の特性に合わせて、組織の方が柔軟に対応していく。


Phrona:理想的ですね。でも、それって組織側にとってはすごく大変じゃないですか? 6つのタイプそれぞれに違う制度を作るなんて。


富良野:全部を完璧に作る必要はないんじゃないかな。まずは、選択肢を増やすことから始めればいい。昇進だけじゃなくて、専門職トラックとか、プロジェクト型のキャリアとか。


Phrona:そうですね。それに、チーム編成でも活かせそう。ストライバーばかりのチームより、いろんなタイプが混ざってる方が、バランスが取れそうだし。


富良野:ああ、それこそAIの得意分野かも。どういう組み合わせが最も効果的か、データから見つけられるかもしれない。


Phrona:でも、効果的って何をもって言うのかな。売上? イノベーション? それとも、メンバーの幸福度?


富良野:全部大事ですよね。短期的な成果と長期的な成長、個人の充実と組織の発展、そのバランスを取るのが、これからのマネジメントなのかもしれません。



 

ポイント整理


  • アーキタイプ効果の本質

    • 従業員を6つのタイプ(ギバー、オペレーター、エクスプローラー、アルチザン、ストライバー、パイオニア)に分類し、それぞれの動機や価値観に応じた人材管理を行うという理論。重要なのは、人を固定的に分類することではなく、多様な動機を理解し尊重すること。

  • 従来の人材戦略の問題点

    • 「すべての従業員が昇進やリーダーシップを望んでいる」という暗黙の前提があり、それ以外の価値観(技術を極めたい、他者を支援したい等)が軽視されてきた。この画一的なアプローチが、多くの従業員のエンゲージメント低下を招いている。

  • AIがもたらす変革の可能性

    • AIによって個々の従業員のスキル、経験、動機をより深く分析し、個別最適なキャリアパスを提案できるようになる。また、定性的なデータ(面談記録、日報等)からも傾向を読み取ることで、より繊細な理解が可能に。

  • 実装における課題

    • AIの学習データに既存の偏見が含まれるリスク、プライバシーの問題、複雑な人間性をどこまで理解できるかという限界などがある。技術だけでなく、それを使う側の価値観や制度設計が重要。

  • 目指すべき方向性

    • 「満足」から「インスピレーション(内発的動機)」へと焦点を移し、個人の特性に応じた多様なキャリアパスや評価制度を構築すること。組織と個人の関係を、一方的な適応から相互的な調整へと転換していく必要がある。



キーワード解説


アーキタイプ(Archetype)】

心理学や文化研究で使われる「原型」「典型」を意味する概念


エンゲージメント】

従業員の仕事への熱意や組織への愛着度


内発的動機】

外的な報酬ではなく、活動そのものから得られる満足感による動機づけ


タレントマネジメント】

従業員の能力や可能性を最大限に引き出すための戦略的な人材管理


キャリアパス】

個人が組織内で辿る職業上の道筋や成長の軌跡


HRテック】

人事領域にテクノロジーを活用したソリューション



本稿は近日中にnoteにも掲載予定です。
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