AIが変える次世代ゲーム体験──なぜブロックチェーンが必要なのか
- Seo Seungchul

- 2025年12月2日
- 読了時間: 8分

シリーズ: 知新察来
◆今回のピックアップ記事:Kin Wai Lau "AI can’t do it alone: Blockchain is the missing piece in next-gen gaming" (Cointelegraph, 2025年6月12日)
概要:A I技術がゲーム業界を変革しているが、真の次世代ゲーム体験を実現するにはブロックチェーンが不可欠であるという論考。中央集権的なシステムではAIの生成物が使い捨てになり、プレイヤーの創造性や所有権が制限される問題を指摘し、分散型インフラストラクチャーによる解決策を提示している。
最近、AIがゲーム業界に革命を起こしているという話をよく耳にしますよね。ChatGPTのような生成AIが話題になってから、ゲーム内でもAIキャラクターが自然な会話をしたり、プレイヤーに合わせてストーリーが変化したりする技術が注目されています。でも実は、こうした革新的な体験を本当の意味で実現するには、AIだけでは足りないという議論があるんです。
今回は、ZKcandyのCEOであるKin Wai Lau氏の論考をもとに、なぜ次世代のゲーム体験にブロックチェーンが不可欠なのかを探ってみましょう。富良野とPhronaが、この新しいゲームの未来について語り合います。二人の対話を通じて、AIとブロックチェーンが組み合わさることで生まれる可能性と、そこに潜む課題が見えてくるはずです。ゲームが単なる娯楽を超えて、創造的な社会空間になる未来について、一緒に考えてみませんか。
今のゲームに足りないもの
富良野:最近、AIがゲーム業界を変えているという話をよく聞きますけど、Phronaさんはどう見てますか?僕は、現在のゲームシステムには根本的な問題があると感じているんです。
Phrona:私も同じような違和感を持っています。AIキャラクターが賢くなって、プレイヤーに合わせて反応するのは素晴らしいんですけど、なんだか表面的というか。プレイヤーが時間をかけて築いた関係性や創造物が、ゲームを終了したら消えてしまうのは寂しいですよね。
富良野:まさにそこなんですよ。Lau氏が指摘している「使い捨ての創造物」という表現が的確だと思います。プレイヤーがAIと一緒に作り上げた独自のストーリーや、時間をかけて育てたキャラクターが、サーバーが閉鎖されたら全て消えてしまう。これは所有権の問題でもありますね。
Phrona:ゲームって本来、想像力を働かせて何かを作り上げる場所だと思うんです。でも今のシステムだと、どんなに素晴らしいものを作っても、それは結局ゲーム会社のものになってしまう。プレイヤーは借りているだけなんですよね。
富良野:経済学的に言えば、プレイヤーの創造的労働が適切に評価されていない状態です。AIと協力して新しいアイテムやキャラクターを生み出しても、その価値を享受できるのは運営会社だけ。これでは創造のインセンティブが働きにくいですよね。
AIの記憶とブロックチェーンの可能性
Phrona:でも、AIの記憶って面白い問題ですよね。今のAIは一回のセッションが終わると、全部忘れちゃう。昨日一緒に冒険したNPCが、今日会ったら初対面みたいな顔をするのって、ちょっと切ないです。
富良野:そうそう、継続性の問題ですね。Lau氏はブロックチェーンを使えば、AIの記憶や進化を永続的に記録できると言っています。分散型台帳に記録することで、セッションを超えてAIが学習し続けられる。
Phrona:それって、まるで共有された日記みたいですね。プレイヤーとAIが一緒に紡いだ物語が、ブロックチェーンという形で残り続ける。技術的な話だけじゃなくて、感情的な繋がりも保存されるということでしょうか。
富良野:実際、ブロックチェーンに記録されるのはデータですけど、そこには確かに関係性の履歴が刻まれている。しかもそれがプレイヤーのウォレットに保存されるから、真の意味で自分のものになる。
Phrona:ただ、すべてを記録するって、ちょっと怖くもありませんか?忘れることも大切な場合があるし、全部が永遠に残るのは重たい気もします。
富良野:確かに、プライバシーや忘れられる権利の問題は考える必要がありますね。ただ、現在のレイヤー2やレイヤー3の技術なら、必要な情報だけを効率的に記録できるようになってきています。コストもかなり下がってきているし。
所有から生まれる新しいゲーム体験
Phrona:NFTという言葉が出てきましたけど、投機的なイメージが強くて、ゲームと結びつきにくい人も多いんじゃないでしょうか。
富良野:Lau氏も強調していますが、ここでのNFTは投機目的じゃなくて、純粋に所有権を保証するための仕組みなんです。プレイヤーがAIと一緒に作ったアイテムをNFTにすることで、他のゲームでも使えるようになる。
Phrona:ゲームの垣根を超えて、自分の創造物を持ち運べるということですね。それって、まるで旅をするみたい。あるゲームで作った剣を、別のゲームの冒険でも使えるなんて。
富良野:そうなんです。これが実現すると、ゲームは単独のタイトルじゃなくて、相互に繋がった社会的エコシステムになる。プレイヤーは自分の創造物を見せ合ったり、交換したりできる。
Phrona:でも、それってゲームバランスとか大丈夫なんでしょうか。あるゲームで最強の武器を作って、それを別のゲームに持ち込んだら...
富良野:技術的には可能でも、ゲームデザイン的には調整が必要でしょう。各ゲームが独自のルールで、持ち込まれたアイテムをどう扱うか決める必要がある。完全な互換性よりも、象徴的な価値の移転かもしれません。
創造性の経済化と新しい収益モデル
Phrona:プレイヤーが作ったものを売買できるようになるって、ゲームの本質が変わりそうですね。遊びが仕事になるというか。
富良野:初期のPlay-to-Earnゲームの失敗を見ると、その懸念はよくわかります。ただ、Lau氏が言うように、収益化はゲームプレイを補完するものであって、置き換えるものじゃない。大切なのは、創造的な活動に対する適切な報酬です。
Phrona:つまり、お金を稼ぐためにゲームをするんじゃなくて、楽しんで創造した結果として価値が生まれる、ということですか?
富良野:まさにその通りです。AIエージェントが自動的に最適な取引を実行してくれるので、プレイヤーは技術的な部分を気にせず、創造活動に集中できる。マーケットプレイスもゲームプレイに自然に組み込まれる形になるでしょう。
Phrona:開発者にとってもメリットがあるんですね。一度売って終わりじゃなくて、プレイヤーの創造活動から継続的に収益を得られる。
富良野:そう、これは新しいビジネスモデルなんです。取引手数料やカスタマイゼーション料金、プレミアムAIツールの提供など、様々な収益源が生まれる。プレイヤーと開発者がウィンウィンの関係を築ける可能性があります。
未来のゲームが示す社会の形
Phrona:こうして話していると、ゲームって単なる娯楽を超えて、新しい社会実験の場になりそうですね。
富良野:確かに。分散型のインフラストラクチャーを使うことで、中央集権的な管理から解放された創造空間が生まれる。これは大企業や銀行が分散型技術を採用し始めているのと同じ流れです。
Phrona:でも、すべてがオープンで透明になることで、失われるものもあるかもしれません。秘密の楽しみとか、個人的な体験の価値とか。
富良野:バランスが大切ですよね。技術的に可能なことと、人間にとって心地よいことは違う。ブロックチェーンもAIも、あくまで人間の創造性や社会性を豊かにするための道具であるべきです。
Phrona:Lau氏の言葉を借りれば、Web3なしでは次世代ゲームは「デモ版」に過ぎない、と。でも私は思うんです。技術だけじゃなくて、それを使う私たちの想像力や思いやりも同じくらい大切なんじゃないかって。
富良野:その通りですね。技術は可能性を開くけど、それをどう使うかは僕たち次第。AIとブロックチェーンが作る新しいゲームの世界で、どんな物語を紡いでいくのか。それが本当の意味での次世代体験なのかもしれません。
ポイント整理
AIの限界と中央集権の問題
現在のAIゲームは企業のサーバーに依存しており、プレイヤーの創造物や記憶が一時的なものになってしまう。サーバー停止やアカウント削除により、長期間かけて築いた関係性やコンテンツが失われるリスクがある。
ブロックチェーンによる永続性の実現
分散型台帳技術により、AIの学習履歴やプレイヤーの行動記録を永続的に保存可能。セッションを超えてAIが成長し、一貫したストーリーやキャラクターの発展が実現できる。
真の所有権とNFTの活用
プレイヤーがAIと共に作成したアイテムやキャラクターをNFTとして所有可能。これにより、ゲーム間での資産の移動や、創造物に対する実質的なコントロールが可能になる。
新しい収益モデルの創出
プレイヤーは自身の創造物から収益を得られ、開発者も取引手数料などから継続的な収入を確保。従来の売り切り型から、エコシステム型のビジネスモデルへの転換。
社会的ゲーム体験の実現
ゲームが独立したタイトルから相互接続されたエコシステムへ進化。プレイヤー同士が創造物を共有・比較・取引することで、新しい社会的つながりが生まれる。
キーワード解説
【レイヤー2/レイヤー3】
ブロックチェーンの処理速度向上とコスト削減を実現する技術
【NFT(Non-Fungible Token)】
デジタル資産の所有権を証明する技術
【分散型台帳】
中央管理者なしにデータを記録・共有するシステム
【AIエージェント】
自律的に判断・行動するAIプログラム
【Play-to-Earn】
ゲームプレイを通じて収益を得るモデル
【ウォレット】
デジタル資産を保管・管理するツール
【スマートコントラクト】
ブロックチェーン上で自動実行される契約