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AIとブロックチェーンが作り出す、金融の新しい風景を読み解く

シリーズ: 知新察来


◆今回のピックアップ記事:Andres Zunino "The Convergence Of AI And Blockchain In Modern Finance" (Forbes, 2025年6月13日)

  • 概要:AIとブロックチェーン技術の融合が金融市場にもたらす影響、特に資産のトークン化における運用効率の向上、コンプライアンス自動化、投資機会の拡大について論じた記事。2025年から2029年にかけて市場規模が2.5倍以上に成長する予測も含む。



デジタル革命の波が、また新しいフェーズに入ろうとしています。AI技術の急速な発展と、ブロックチェーンによる分散型台帳の普及。この二つの技術が交差する地点で、金融システムに何が起きているのでしょうか。


Forbes Technology Councilに掲載されたAndres Zuninoさんの記事を読むと、単なる技術の進歩ではなく、お金や資産に対する考え方そのものが変わりつつあることが見えてきます。資産のトークン化という新しい概念が、私たちの投資機会やリスク管理にどんな影響を与えるのか。


今回は、この技術革新を富良野とPhronaの視点から読み解いてみましょう。システムや制度の観点から分析する富良野さんと、人間の感情や社会的影響に注目するPhronaさん。二人の対話から、技術がもたらす光と影、そして私たちが直面する新しい選択肢について考えていきます。




技術の交差点で何が起きているのか


富良野:Phronaさん、このForbesの記事読みました? AIとブロックチェーンの融合が金融をどう変えるか、という話なんですけど。


Phrona:読みましたよ。資産のトークン化って概念、なんだか現実と仮想の境界が曖昧になっていく感じがして、ちょっとドキドキしますね。


富良野:確かに。でも、技術的な側面から見ると、これってすごく合理的な進化だと思うんですよ。ブロックチェーンの改ざん困難性とAIの分析力を組み合わせることで、今まで不可能だった金融サービスが可能になる。


Phrona:合理的、ですか。でも私、この記事読んで最初に思ったのは、誰のための合理性なんだろう、って。


富良野:あ、それは鋭い指摘ですね。記事では運用コストが40%削減できるとか、サービス提供が5倍速くなるとか書いてあるけど。


Phrona:そう、効率化の恩恵を受けるのは主に金融機関側ですよね。一般の人たちにとってはどうなんでしょう。投資機会が増えるって言われても、結局リスクも増えるんじゃないかって。


富良野:確かに、そこは慎重に見る必要がありますね。ただ、記事が言う「これまでアクセスが困難だった市場への参入」という点は、民主化の側面もあるんじゃないかな。


Phrona:民主化、か。でも、技術的な知識がないと結局参加できないんじゃないですか? デジタル格差がそのまま投資格差になりそうで。


トークン化が変える所有の概念


富良野:資産のトークン化について、もう少し掘り下げてみましょうか。記事では、所有権をデジタルトークンに変換するプロセスだって説明してますね。


Phrona:私、この「所有」って概念が変わるのが面白いと思うんです。今までは不動産とか絵画とか、物理的に一つしかないものを誰かが所有してたわけじゃないですか。


富良野:そうですね。でもトークン化すると、例えば1億円の絵画を1万人が1万円ずつ所有できるようになる。


Phrona:でも、それって本当に「所有」なんでしょうか? 絵を家に飾ることもできないし、触ることもできない。デジタルな権利だけを持つって、なんだか実感がわかないんですよね。


富良野:僕はむしろ、それが新しい価値観なんじゃないかと思いますけどね。物理的な独占よりも、経済的な利益の共有を重視する。


Phrona:うーん、でもそれって、モノへの愛着とか、所有することの喜びみたいな、人間的な側面が失われていくような気もして。


富良野:ただ、逆に言えば、今まで富裕層だけが独占してきた投資機会が、より多くの人に開かれるということでもありますよね。


Phrona:そこは確かに魅力的ですね。でも同時に、みんなが投資家になる社会って、どこか息苦しくないですか? 常に利益を追求しなきゃいけないような。


AIが判断する価値と人間の感覚


富良野:記事では、AIが資産評価や価格設定を行うって書いてありますね。これ、すごく興味深い。


Phrona:私はちょっと怖いなって思いました。価値って、本来は人間が感じるものじゃないですか。それをAIが決めるなんて。


富良野:でも、人間の判断って感情や偏見に左右されやすいですよね。AIの方が客観的で公平な評価ができるかもしれない。


Phrona:客観的、ねえ。でもAIだって、結局は人間が作ったデータで学習してるわけでしょう? そこに偏見が含まれてたら、AIもそれを引き継ぐんじゃないかな。


富良野:あ、実際、記事でもアルゴリズムのバイアスについては課題として挙げられてますね。


Phrona:それに、価値って数値化できない部分もありますよね。例えば、ある土地が持つ歴史的な意味とか、コミュニティにとっての重要性とか。


富良野:確かに。でも一方で、人間の恣意的な判断で不当に価格が操作されることも防げるかもしれない。


Phrona:そうかもしれません。でも、全部をアルゴリズムに任せちゃうと、私たち人間は何のために存在するんだろうって思っちゃいます。判断する力を失っていくような。


規制との折り合いをどうつけるか


富良野:記事の後半で、規制の問題について触れてますね。これ、かなり重要なポイントだと思うんですけど。


Phrona:規制って聞くと、なんだか窮屈な感じがしますけど、でも必要なんですよね、きっと。


富良野:そうなんですよ。特に金融って、失敗すると人々の生活に直接影響しますから。記事でも、KYCとかAMLとか、本人確認やマネーロンダリング対策の重要性を強調してる。


Phrona:でも、ブロックチェーンって元々は中央集権的な管理から自由になるための技術だったんじゃないですか? それなのに結局規制されるって、なんだか皮肉ですね。


富良野:確かに、理想と現実のギャップはありますね。ただ、完全な自由って、悪用される可能性も高いんです。


Phrona:そうか、自由と安全のバランスですね。でも、規制を作る側の人たちは、この新しい技術をちゃんと理解してるんでしょうか。


富良野:それは大きな課題ですね。技術の進化スピードに法律が追いついてない。記事でも、規制の不確実性が最大の障壁だって書いてある。


Phrona:私が心配なのは、規制が厳しすぎて、せっかくの技術の可能性が活かされなくなることかな。でも逆に、ゆるすぎても問題が起きそうだし。


富良野:バランスが大事ですよね。スマートコントラクトに規制ロジックを組み込むっていうアイデアは面白いと思いますよ。技術的に規制を実装する。


透明性という新しい価値


Phrona:記事で「説明可能なAI」って言葉が出てきましたけど、これ、すごく大事だと思うんです。


富良野:XAIですね。確かに、AIがどうやって判断したかを説明できないと、信頼できない。


Phrona:そうそう。ブラックボックスって怖いじゃないですか。なんでこの価格になったの?って聞いても、AIが決めたから、じゃ納得できない。


富良野:特に金融では、説明責任が重要ですからね。投資家に対して、なぜこの判断をしたのか説明できないといけない。


Phrona:でも、説明可能にすることで、AIの判断が単純化されちゃうんじゃないかって心配もあります。複雑な現実を、人間に分かりやすく説明するために、大事な何かを見落としちゃうような。


富良野:それは難しいトレードオフですね。精度と透明性のバランス。


Phrona:私は、完全に理解できなくても、せめて「こういう要素を考慮しました」くらいは知りたいかな。全部お任せは怖いです。


富良野:そういう意味では、人間とAIの協働が大事なんでしょうね。AIが分析して、人間が最終判断をする。


Phrona:それいいですね。テクノロジーに使われるんじゃなくて、使いこなす。でも、そのためには私たちも勉強しないといけませんね。


これからの金融と私たちの選択


富良野:記事の最後の方で、2025年から2029年にかけて市場規模が2.5倍以上に成長するって予測がありますね。


Phrona:すごい成長率ですよね。でも、成長することと、それが良いことかは別問題かもしれない。


富良野:どういう意味ですか?


Phrona:いや、技術が進歩して市場が大きくなるのはいいんですけど、その恩恵を受けられる人と取り残される人の差が広がりそうで。


富良野:確かに、デジタルデバイドの問題は深刻ですね。ただ、記事が言うように、これまでアクセスできなかった投資機会が開かれるという面もある。


Phrona:うん、でもそれって、みんなが投資のことを考えなきゃいけない社会になるってことでもありますよね。正直、疲れそう。


富良野:まあ、選択肢が増えるということですから。参加するかしないかは個人の自由。


Phrona:でも、参加しないと損するような社会になったら、それって本当に自由なのかな。


富良野:難しい問題ですね。ただ、技術の進歩自体は止められない。大事なのは、どう使うか、どう規制するか、どう教育するか。


Phrona:そうですね。私たち一人一人が、この変化にどう向き合うか考えないと。技術に振り回されるんじゃなくて、主体的に選択していく。それが大切なのかもしれませんね。



 

ポイント整理


  • AIとブロックチェーンの融合による金融革新

    • 両技術の組み合わせにより、運用コストを最大40%削減し、サービス提供速度を5倍に向上させることが可能。これは単なる効率化ではなく、金融サービスの在り方そのものを変革する動き。

  • 資産トークン化の急成長

    • 2025年の41.3億ドルから2029年には106.5億ドルへと、年平均成長率26.8%で拡大すると予測。これは所有権の概念を根本から変え、少額投資家にも高額資産への投資機会を提供する。

  • AI活用の具体例

    • JPモルガン・チェースなどの大手金融機関が生成AIツールを導入し、非構造化データの処理による精密な資産評価と効率的なコンプライアンスチェックを実現。これにより大幅なコスト削減と業務効率改善を達成。

  • 規制上の課題

    • デジタル資産に関する規制の不確実性が最大の障壁。一方で、スマートコントラクトにKYCやAMLなどの規制ロジックを直接組み込むことで、継続的な規制遵守を自動化する試みも進行中。

  • 説明可能なAI(XAI)の重要性

    • 金融市場での自動意思決定において、透明性と説明責任を確保するためXAIが必須に。これにより、複雑なモデルの出力を解釈し、法的基準や倫理的期待に沿った判断を保証。

  • 新たなリスクへの対応

    • アルゴリズムのバイアス、サイバーセキュリティの脆弱性など、新技術導入に伴う新しいリスクへの対処が課題。厳格な監督と透明なガバナンスの必要性が高まっている。



キーワード解説


資産トークン化】

不動産や美術品などの所有権をブロックチェーン上のデジタルトークンに変換すること


生成AI(GenAI)】

2024年から急速に普及した、新しいコンテンツを生成できるAI技術


KYC(Know Your Customer)】

金融機関が顧客の身元確認を行うプロセス


AML(Anti-Money Laundering)】

マネーロンダリング(資金洗浄)を防止するための対策


スマートコントラクト】

ブロックチェーン上で自動実行される契約プログラム


説明可能なAI(XAI)】

AIの判断過程を人間が理解できるように説明する技術


CAGR(Compound Annual Growth Rate)】

年平均成長率


分散型台帳】

ブロックチェーンの基盤技術で、複数の参加者間でデータを共有・管理する仕組み



本稿は近日中にnoteにも掲載予定です。
ご関心を持っていただけましたら、note上でご感想などお聞かせいただけると幸いです。
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