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「使うもの」から「経営の基盤」にAIが変わるとき――OpenAI Developer Day 2025が示す未来

更新日:2025年12月8日

シリーズ: 知新察来


◆今回のピックアップ記事:Eric Sheng "AI Becomes a Modular Business Platform" (Bain Insights, 2025年10月)

  • 概要:OpenAIの2025 Developer Dayで発表された内容を踏まえ、AIがツールから企業活動の基盤となるモジュラーなプラットフォームへと進化していることを解説。アプリケーション、エージェント、コード生成、マルチモーダル生成、APIなど、企業のAI活用を根本から変える5つの重要な動向を分析。



デジタル化、DX、そしてAI活用。私たちはこの数年、次々と新しい波に追われてきました。でも、2025年のOpenAI Developer Dayで発表された内容を見ていると、今度こそ本当に大きな転換点に来ているような気がします。


AIがただのツールではなく、企業のあり方そのものを変えるプラットフォームになりつつある。そんな未来の輪郭が、少しずつ見えてきたようです。


今回は、富良野とPhronaの二人が、このAIプラットフォーム化について語ります。技術の進化が私たちの仕事や組織にどんな影響を与えるのか、一緒に考えてみませんか。




プラットフォームという言葉の重み


富良野:AIがプラットフォームになるって、言葉としては分かるんですけど、実際に形になってくると、その意味の重さを改めて感じますね。


Phrona:ええ、私も同じような感覚を持っています。プラットフォームって言葉、最近よく使われすぎて軽くなってる気もしてたんですけど、今回のは違いますよね。ChatGPTの中にアプリが作れるようになったというのは、まさにApp Storeの登場を思い出させます。


富良野:まさにそれです。僕たちが毎日使っているiPhoneも、最初は電話とメールとウェブブラウザがあるだけの端末だったわけですよ。それがApp Storeの登場で、無限の可能性を持つプラットフォームになった。同じことがAIでも起きようとしている。


Phrona:でも富良野さん、iPhoneの場合は物理的なデバイスという明確な境界があったじゃないですか。AIのプラットフォーム化って、もっと境界が曖昧というか、どこまでが内側でどこからが外側なのか、よく分からなくなってきている気がして。


富良野:なるほど、確かに。ChatGPTの中にアプリが動くって言われても、それは画面の中の話なのか、クラウドの話なのか、企業のシステムの話なのか。全部が溶け合っているような感じがしますね。


Phrona:そこが面白くもあり、ちょっと不気味でもあるんですよね。プラットフォームって、本来は土台とか基盤って意味ですけど、AIの場合は液体みたいに企業のあちこちに染み込んでいくような。


エージェントが「同僚」になる日


富良野:レポートの中で特に印象的だったのが、エージェントシステムの話なんです。パイロットから本番環境へ、って書いてありますけど、これ相当大きな転換点ですよ。


Phrona:エージェントって、要するにAIが自律的に動いて仕事をこなすってことですよね? でも富良野さん、それって今までのRPAとかワークフロー自動化と何が違うんですか?


富良野:従来の自動化は、人間が全部のステップを定義してあげないといけなかった。でもエージェントは、目的さえ与えれば、やり方は自分で考えてくれる。例えばですよ、コードの近代化っていう仕事があったとして、今までなら人間がひとつひとつ見て直していく必要があった。


Phrona:ああ、でもエージェントなら、古いコードを見つけて、それを新しい書き方に変えて、テストして、問題がないか確認して、みたいなことを自分でやってくれるってこと?


富良野:まさにその通りです。しかも興味深いのは、ベインが実際にそういうエージェントを使って25%の効率改善を実現したって書いてあること。これ、もう実験じゃなくて実務なんですよ。


Phrona:25%って、けっこうな数字ですよね。でも私、ちょっと気になるのは、エージェントが同僚になるっていう表現。同僚って、単に仕事をこなすだけじゃなくて、一緒に悩んだり、時には失敗したりする存在じゃないですか。


富良野:ああ、そこは僕も考えさせられました。レポートでは、人間による監督とか評価の仕組みを強調してますよね。つまり、完全に任せきりじゃなくて、人間とエージェントが協働する形を想定している。


Phrona:協働って言葉、最近よく聞きますけど、実際どんな感じになるんでしょうね。朝のミーティングでエージェントに今日のタスクを割り振って、夕方に進捗確認するみたいな?


富良野:それはちょっとシュールですけど、案外そういう風景が普通になるかもしれませんよ。ただ、僕が思うに、エージェントとの協働で大事なのは、信頼関係をどう築くかなんじゃないかな。


創造性の大衆化、それとも均質化?


Phrona:動画生成のSora 2の話も出てましたね。私、これについては正直、複雑な気持ちなんです。誰でも簡単にプロ級の動画が作れるようになるって、素晴らしいことだとは思うんですけど。


富良野:でも、何か引っかかるものがある?


Phrona:そうなんです。創造性って、ある種の制約とか、技術的な困難を乗り越える中で生まれる部分もあるじゃないですか。それが全部AIで解決されちゃったら、みんな同じような表現になってしまわないかって。


富良野:なるほど、創造性の民主化が、逆に創造性の均質化につながる可能性があると。でも、考えようによっては、技術的な制約から解放されることで、純粋にアイデアとか構想の勝負になるとも言えませんか?


Phrona:それはそうかもしれません。でも富良野さん、私たちって無意識のうちに、作り手の苦労とか努力も含めて作品を評価してる部分があると思うんです。AIが一瞬で生成した動画に、同じような感動を覚えられるかどうか。


富良野:確かに、そこは新しい価値観が必要になりそうですね。ただ、企業の視点で見ると、マーケティングとか広告の世界では、もうそういう哲学的な問いを考えている余裕はないかもしれない。


Phrona:ああ、そうか。競合他社がAIを使って毎日何百本も動画を作ってたら、自分たちだけ手作業でやってるわけにはいかないですもんね。


富良野:そうなんです。だから企業は、AIを使うか使わないかじゃなくて、どう使うかを考えないといけない。レポートでも言ってるように、資産を作ることから、パイプラインを管理することへシフトする必要がある。


APIが開く可能性と責任


Phrona:APIの話も興味深いですよね。GPT-5 Proとか、どんどん新しいモデルが出てきて。でも私、ちょっと心配なのは、これだけ強力な技術が簡単に使えるようになると、悪用される可能性も高まるんじゃないかって。


富良野:それは本当に重要な指摘です。APIって、要はAIの能力を部品として提供するってことですから、組み合わせ次第でどんなものでも作れてしまう。


Phrona:そうそう、レゴブロックみたいなものですよね。でも、レゴと違って、AIのブロックは何を作り出すか予測がつかない部分がある。


富良野:だからこそ、ガバナンスとか測定の仕組みが重要になってくるんでしょうね。レポートの最後でも、そこを強調してます。ただ組み立てるだけじゃなくて、何を作っているのか、それがどんな影響を与えるのかを常に監視する必要がある。


Phrona:でも富良野さん、そういう監視って、誰がやるんでしょう? 企業の中にAI倫理委員会みたいなものを作るのかな。


富良野:おそらくそういう方向に行くでしょうね。ただ、僕が思うに、倫理とかガバナンスって、特別な部署だけの仕事じゃなくて、AIを使う全ての人が意識すべきことなんじゃないかな。


「使う」から「動かす」への転換


Phrona:レポートの最後に、AIを使うことから、AI上で動くことへの転換って書いてありましたね。これ、すごく詩的な表現だと思いました。


富良野:実際のところ、もう多くの企業がその海に足を踏み入れているんじゃないですか? メールの自動返信とか、チャットボットとか、気づかないうちにAIに囲まれて仕事してる。


Phrona:そうですね。でも、それがプラットフォーム化するってことは、もっと根本的な変化が起きるってことですよね。組織の在り方とか、人の役割とか、全部見直さないといけない。


富良野:まさにその通りです。だからこそ、今この転換期に、しっかりと方向性を定める必要がある。ただ流されるんじゃなくて、どういう未来を作りたいのかを考えながら。


Phrona:私、思うんですけど、AIプラットフォーム時代って、技術の問題というより、私たち人間がどう変わるかの問題なのかもしれませんね。



 

ポイント整理


  • AIのプラットフォーム化

    • OpenAIは単なるツール提供から、企業活動の基盤となるモジュラーなシステムへと進化。ChatGPT内でアプリケーションが動作する「App Store」モデルが登場し、企業は新しいエコシステム戦略を構築する必要がある。

  • エージェントシステムの実用化

    • AIエージェントがパイロット段階から本番環境へ移行。ベインの事例では25%の効率改善を実現。人間の監督下で自律的に動作し、コード近代化などの複雑なタスクを遂行。

  • 開発者協働の新しい形

    • Codexの一般提供開始により、AIが個人の生産性ツールから、チーム内でのデジタルな同僚へと進化。コードレビューやモジュール作成を担当する「デジタル労働力」として機能。

  • マルチモーダル生成の標準化

    • Sora 2による動画生成、画像・音声生成モデルの小型化により、クリエイティブ作業が大幅に効率化。企業は資産作成から、生成パイプラインの管理とブランド整合性の確保へとフォーカスをシフト。

  • API戦略による開発者重視

    • GPT-5 Pro、Sora 2 Pro、Mini RealtimeなどのAPI提供により、開発者が自由にAI機能を組み合わせて独自のソリューションを構築可能に。

  • 企業運営の根本的変化

    • 「AIを使う」から「AI上で動く」への転換。アプリ、エージェント、モデルが継続的に協働する新しい企業運営モデルの確立が競争優位の源泉に。



キーワード解説


モジュラープラットフォーム】

独立した機能単位を組み合わせて全体を構成するシステム設計


Apps SDK】

開発者がChatGPT内で動作するアプリケーションを作成するためのツールキット


AgentKit:

AIエージェントの構築、デプロイ、管理を行うための統合開発環境


Codex】

コード生成・レビューを行うAIシステム、Slackとの統合も実現


Sora 2】

OpenAIの次世代動画生成モデル


デジタル労働力】

AIが人間の同僚として定義された役割を担う新しい労働形態


ガバナンスパイプライン】

AI生成コンテンツの品質とブランド整合性を管理する仕組み



本稿は近日中にnoteにも掲載予定です。
ご関心を持っていただけましたら、note上でご感想などお聞かせいただけると幸いです。
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