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トランプ外交が生んだ意外な結果――ラテンアメリカで左派が勢いを取り戻している理由

更新日:2025年12月28日

シリーズ: 知新察来


◆今回のピックアップ記事:Steve Ellner "Trump's Provocations Are Bolstering Latin America's Left" (Jacobin, 2025年11月13日)

  • 概要:トランプ政権の攻撃的な対ラテンアメリカ政策が、意図せず左派勢力を結束させ、政治的基盤を強化している現象を分析。関税戦争、軍事的威嚇、選挙介入などが、ナショナリズムの高まりと左派の支持率回復をもたらしている実態を報告。



2025年1月にドナルド・トランプが再び大統領に就任した時、ラテンアメリカの左派政権、いわゆるピンクタイド政権は苦境に立たされていた。ブラジルのルラ大統領の支持率は3期の中で最低を記録し、コロンビアのペトロ大統領は34パーセントという低支持率に沈んでいた。ベネズエラのマドゥロ大統領も地域で孤立していた。しかし1年も経たないうちに、状況は一変する。


トランプの強引な行動――メキシコ湾の名称変更、関税の武器化、カリブ海と太平洋での軍事行動――が、皮肉にもラテンアメリカの左派を再活性化させた。モンロー主義の復活を宣言するトランプに対し、ラテンアメリカ全域でナショナリズムの高まり、大規模なデモ、そして中道右派を含む幅広い政治スペクトルからの批判が巻き起こっている。


一方で、衰退する覇権国に見える米国とは対照的に、中国は国家主権の擁護者として、貿易と投資における理性的な声として、自らを位置づけようとしている。この力学の変化が、ラテンアメリカの政治地図を塗り替えつつある。富良野とPhronaが、この複雑で皮肉に満ちた状況を読み解く。




ルラとトランプの対決、または「屈しない」姿勢の力


富良野:トランプが強圧的に出れば出るほど、ラテンアメリカの左派が勢いを取り戻してる。逆説的ですよね。


Phrona:普通なら、大国の圧力に屈するか、少なくとも弱体化しそうな気がしますけど。


富良野:そう、それが定石なんだけど。でもブラジルのルラの対応が象徴的だった。トランプが50パーセントの懲罰的関税をかけて、同盟者のボルソナーロを釈放しろって迫ったとき、ルラは「自分を辱めるつもりはない」って言い切った。


Phrona:あ、他の首脳たちがトランプに連絡取ろうとしてた中で、ですよね。


富良野:そう。むしろ「ブラジルは誰にも指導されない」って宣言して、1964年のクーデターを引き合いに出した。米国による介入の歴史を明示的に想起させたわけ。


Phrona:それって、記憶の政治ですよね。過去の傷を今の対立の文脈に置き直すことで、単なる経済問題じゃなくて主権の問題だって示した。


富良野:正確にそう。で、その直後に何が起きたかっていうと、ブラジル全土で大規模な政府支持デモが発生した。右派が呼びかけたボルソナーロ釈放要求のデモをはるかに上回る規模でね。


Phrona:関税を、ボルソナーロのせいだって。


富良野:特にボルソナーロの息子エドゥアルドが、ワシントンに移住して関税を求めるキャンペーンをしてたから、ルラは「裏切り者」って呼んで、新たな裁判にかけるべきだと主張した。「ボルソナーロ税」って呼ばれるようになった。


Phrona:なんというか、敵失を最大限に活用してますよね。外圧を国内の求心力に変換する古典的な手法だけど、それが実際に機能してる。


富良野:そう、で結果としてルラの支持率は50パーセントまで回復して、80歳だけど2026年の再選に名乗りを上げた。トランプの関税が、結果的にルラにとってゲームチェンジャーになった。


Phrona:トランプからすれば本末転倒ですね。圧力をかけることで相手を弱体化させるつもりが、逆に支持基盤を強化してしまった。


富良野:ただ、ルラの対応には批判もある。10月6日にトランプとビデオ会議したとき、カリブ海での米軍の砲艦外交を非難しなかったって。ナイーブで腰抜けだって評価もあるよ。


Phrona:でも、批判する人たちが期待するような、全面的な対決姿勢を取るのが常に正解とは限らないですよね。


富良野:そこが微妙なとこで、ルラは公の場ではカリブ海の米軍プレゼンスを「緊張要因」って言ってるし、カリブ海を「平和地帯」って呼んでる。ただ、より明示的にベネズエラとの連帯を示すべきだって、彼を支持した農地なし農民運動からは言われてるね。


Phrona:つまり、完全に屈してるわけじゃないけど、全面対決も避けてる。


富良野:その駆け引きが実は機能してる。ルラもメキシコのシェインバウム大統領も、トランプとの関係で結局は望んだものの多くを手に入れた。しかもトランプは両者を褒め称えるまでになった。


Phrona:強硬さと柔軟さのバランス、ですか。面子を保ちながら実利を取る。


富良野:コロンビアのペトロはもっと対決的なレトリックを使ってるけど、ルラとシェインバウムは慎重さと毅然さを組み合わせたアプローチを取ってる。どちらが長期的に効果的かは、まだ見えないけどね。


広がる統一戦線――予期せぬ共闘の可能性


Phrona:ブラジルで起きてる変化が興味深いです。ルラが10月に、ホームレス労働者運動の活動家で元大統領候補のボウロスを、大統領府の大臣に任命したって。


富良野:あれは象徴的な人事だよ。ボウロスは社会主義自由党、つまりPSOLに所属してる。労働者党から分離した左派政党で、2022年にルラを支持はしたけど、政権には入らないって決めてた党だ。


Phrona:なのに今回は異なる?


富良野:「ルラは私に、政府を街に出す使命を与えた。大衆の要求に耳を傾けるために」ってボウロスが言ってる。つまり、社会運動を動員する役割を担うってことだ。


Phrona:それって、ルラが2026年の選挙に向けて、より左に舵を切ってるってことですよね。


富良野:マイアミのメディアが「ルラは自分のスタイルで戦争の準備をしてる。社会運動を使った戦争だ」って表現してた。それまで距離を置いてた左派勢力を取り込んで、基盤を広げようとしてる。


Phrona:トランプの圧力が、結果的に左派内部の分裂を修復してるってことか。外敵の存在が内部統合を促す、っていう。


富良野:そう。でもっと顕著なのがベネズエラだね。マドゥロ政権はこれまで、多くの左派から批判を受けてきた。非民主的な対応とか、ビジネス利益への譲歩とか。


Phrona:チャベスの時代から一緒だった人たちからも?


富良野:そう。例えばエリアス・ハウアは、チャベスの側近だったんだけど、経済政策や党内民主主義についての左派的立場が原因で、チャビスタ運動の中で周縁化されてた。


Phrona:その人が今は?


富良野:カリブ海での米軍の脅威に直面して、マドゥロと共闘してる。大統領に対する「心理戦」を批判して、「国民の安心を、あらゆるイデオロギーや政治的利害より優先する必要がある。祖国が第一だ」って言ってる。


Phrona:なんか、すごく重い言葉ですね。信念を一時的に脇に置いてでも、外からの脅威に対処するっていう。


富良野:で、中道や中道右派の政治家もマドゥロとの対話に応じ始めてる。エンリケ・カプリレス、マヌエル・ロサレス、アントニオ・エカリといった元大統領候補たちも含まれてる。


Phrona:それ、すごい展開ですね。反マドゥロだった人たちまで。


富良野:元チャベス政権の要職にいた穏健左派も動いてる。エンリケ・オチョア・アンティッチっていう人が、27人の反マドゥロ派の穏健派が署名した請願書を提出した。「野党の過激派が制裁や米国の行動を支持してるのを見るのは悲しい」って内容で、「国家統一を促進し主権を守る最良の方法について」政府と対話を提案してる。


Phrona:つまり、マドゥロへの批判は続けながらも、米国の脅威に対しては協力するっていう、すごく微妙なバランスですね。


富良野:敵の敵は味方、とまでは言えないけど、少なくとも一時的な共闘相手にはなるってことだね。これ、すごく重要な変化だと思う。


Phrona:アルゼンチンはどうなんですか。ミレイ大統領ってトランプ寄りですよね。


富良野:あれはある意味、トランプの介入が裏目に出た例だね。2025年10月の立法選挙の前夜、トランプがアルゼンチン経済に400億ドルの支援を申し出た。ただし条件は、ミレイの党が勝つことだった。


Phrona:選挙介入、露骨すぎる。


富良野:で、実際にミレイが勝ったんだけど、この「恐喝」は元ピンクタイド政権につながるペロン派から、かつて彼らの最も声高な批判者だった中道派まで、幅広く非難された。中道派の急進市民連合のリーダー、ファクンド・マネスが「恐喝が進行している」って宣言してる。


Phrona:街の反応は?


富良野:ブエノスアイレスの抗議デモでは、ミレイを非難するバナーに反米スローガンが並んだ。「ヤンキーは帰れ」「ミレイはトランプの走狗だ」って。米国旗が燃やされたりもした。


Phrona:短期的にはミレイが勝ったけど、長期的には反米感情と左派の結集を促してるってことですか。


富良野:そういうこと。ピュロスの勝利、っていうやつだね。トランプの支援が、結果的にミレイの正統性を傷つけてる。


ナショナリズムの呼び水――トランプが犯した決定的な誤算


富良野:ここで大きな構造的な変化の話をしたいんだけど、サンパウロ・フォーラムっていう組織がある。100以上のラテンアメリカの左派組織が参加してて、ルラが1990年に設立を助けた。


Phrona:フォーラムって、どういう役割なんですか。


富良野:本来は、地域の左派運動を調整するためのプラットフォーム。2017年、トランプの最初の政権が始まった時、「我らのアメリカの合意」っていう文書を起草した。ワシントン・コンセンサスと米国の介入主義の拡大への応答として。


Phrona:でも機能してない?


富良野:キューバの政治アナリスト、ロベルト・レガラードが嘆いてる。「統一の緊急な必要性があるにもかかわらず、『我らのアメリカの合意』は衰退してしまった」って。


Phrona:なんでですかね。


富良野:進歩的運動の多元性を擁護して、「社会主義」っていう用語を避けた。より具体的な改革と目標のセットを起草することが期待されてたんだけど、次のステップが実現しなかった。


Phrona:つまり理念は共有できても、具体的な行動計画で合意できなかったと。


富良野:そう。でもトランプの登場が、ある種の触媒になってる可能性がある。共通の脅威が明確になったことで、統一の機運が高まってるんじゃないかって。


Phrona:ラテンアメリカの右派は、トランプとどういう関係なんですか。


富良野:多くの右派政治家がトランプに運命を結びつけてる。アルゼンチン、エクアドル、パラグアイの右派大統領、ボルソナーロ、チリの大統領候補ホセ・アントニオ・カスト、コロンビアの元大統領ウリベ。


Phrona:ベネズエラの反政府派リーダー、マリア・コリナ・マチャドも?


富良野:そう、最近のノーベル平和賞をトランプに捧げたね。彼女の仲間のレオポルド・ロペスは2022年に「世界自由会議」を共同設立した。ワシントンが敵対視する国々での政権転覆を目的とした組織だ。


Phrona:それって、スティーブ・バノンが提唱してた「右派のインターナショナル」の構想に沿ってますよね。


富良野:まさに。バノンは2016年に「ザ・ムーブメント」を設立して、ヨーロッパの右派を結集しようとした。でもヨーロッパの右派の多くからは無視されてる。


Phrona:ラテンアメリカでは?


富良野:もっと難しいと思う。米国ではトランプは歪んだ愛国心を利用してるけど、ラテンアメリカでは、ナショナリズムとトランプ支持は矛盾してる。特に関税、移民、軍事侵略の脅威、モンロー主義の持ち出しに関してはね。


Phrona:ベネズエラではマチャドの人気が下がってるって。


富良野:そう、トランプの政策への大衆の反発の結果として、彼女の反政府運動は分裂してる。米国ではトランプが熱狂的支持者に訴えかけながら、全体の人気は着実に下がってる。ラテンアメリカでも同じことが起きてるけど、違いは彼の人気がもともと底辺だったってことだ。


富良野:ピュー研究所の報告だと、トランプを「信頼する」メキシコ人はわずか8パーセントだって。


Phrona:それ、壊滅的ですね。


富良野:でもそれがまさにポイントで、トランプはラテンアメリカの政治地図を大きく変えてしまった。政治的な二極化と左派の進出っていう形で。何十年も傍観者だった左派が、多くの国で主要な参照点になってる。国家主権、あるいは反帝国主義の旗の下で結集してるんだ。


弱者の戦術、あるいは覇権国の衰退と新たな可能性


Phrona:チリの例が印象的です。共産党のジャネット・ハラが、予備選で60.5パーセントの票を獲得したって。


富良野:主要な反右派ブロックの大統領候補を代表することになった。慎重なトーンを取りながらも、トランプに直接語りかけて、アルゼンチンでの選挙介入の後に「米国の兵士は入国しない。チリは尊重されるべきだし、その主権も」って言った。


Phrona:共産党の候補がそこまで支持を集めるって、数年前には考えられなかったでしょうね。


富良野:エクアドルでは、厳しい弾圧にもかかわらず、元ピンクタイド大統領ラファエル・コレアの支持者たちが、過去3回の大統領選で勝利に近づいてる。コロンビアでは、ペトロが米軍作戦への強硬な非難と、10月から始まった国民制憲議会のための200万の署名集めを通じて、運動の基盤を再活性化してる。


Phrona:「二極化」って言葉、普通は両極端が台頭することを指しますよね。


富良野:そう、でもラテンアメリカで起きてるのは、少なくとも左派側では、それとは違う。異なる政治的傾向を持つ進歩派が、トランプとそれが象徴するすべてのものへの反対という形で、収束してるんだ。国内レベルでも、ピンクタイド政権の間でも。


Phrona:つまり、過激化じゃなくて統合?


富良野:まさに。課題は今、この収束を組織化された統一の形に変えていくことだ。国内レベルでの統一戦線、そしてラテンアメリカ・カリブ諸国共同体、CELACとか他の地域組織を通じてね。


Phrona:でも、それって簡単じゃないですよね。左派内部にも様々な立場があるし、過去の対立もある。


富良野:その通り。ただ、トランプという共通の「敵」が明確になったことで、少なくとも戦術的な協力の余地は広がってる。問題は、それを一時的な反応で終わらせず、持続可能な協力関係に発展させられるかどうかだね。


Phrona:中国の役割も気になります。米国が信頼できない衰退する覇権国に見える一方で、中国は国家主権の擁護者として自らを位置づけてるって。


富良野:具体的には、トランプがブラジルに50パーセントの関税をかけたとき、中国が介入して、ブラジルにとって極めて重要な大豆輸出の穴を埋める手助けをした。


Phrona:それって、経済的な相互依存関係を深めることで、政治的な影響力も拡大しようとしてるってことですよね。


富良野:そう。ただ、中国の関与が完全に利他的だとは誰も思ってない。彼らも自分たちの戦略的利益を追求してる。でも、ラテンアメリカの国々からすれば、選択肢が増えることは悪いことじゃない。


Phrona:多極化する世界、ですか。


富良野:少なくとも、米国の一極支配が弱まってることは確かだね。で、トランプの攻撃的な政策が、皮肉にもその傾向を加速させてる。


Phrona:なんていうか、大国の傲慢さが自分自身を傷つけるっていう、古典的なパターンですよね。


富良野:歴史は繰り返す、ってやつだね。ただ、今回の特殊性は、トランプの予測不可能性と、ラテンアメリカの左派がこの機会をどこまで活かせるかってところだと思う。


Phrona:統一の機運は高まってるけど、それを実際の政策変更や制度構築につなげられるかが鍵ですね。


富良野:そう。感情的な反発だけで終わらせず、具体的な協力の枠組みを作れるか。そこが試されてる。

 

 

ポイント整理

  • トランプ政権の圧力の逆効果

    • 2025年1月のトランプ再就任時、ラテンアメリカの左派政権(ピンクタイド)は支持率低下に苦しんでいたが、トランプの攻撃的な政策(関税、軍事的威嚇、選挙介入)が、逆に左派の結束と支持率回復をもたらしている

  • ブラジル・ルラの戦略的対応

    • トランプが50%の懲罰的関税をかけ、ボルソナーロ釈放を要求した際、ルラは「自分を辱めない」と拒否。1964年クーデターに言及し、米国介入の歴史的文脈を喚起。結果として全国規模の支持デモが発生し、支持率が50%まで回復して再選出馬を決意

  • 「ボルソナーロ税」という認識の広がり

    • 関税問題が、ボルソナーロの息子エドゥアルドのワシントンでのロビー活動によるものと認識され、右派への責任転嫁が成功。ルラはボルソナーロを「裏切り者」と呼び、国民の支持を得る

  • 毅然さと柔軟性のバランス

    • ルラとメキシコのシェインバウム大統領は、対決的なレトリックと実務的な交渉を使い分け、結果的に多くの要求を実現。トランプからも称賛を得るという外交的成果を上げた

  • 左派内部の統合が進む

    • ブラジルでルラが、かつて政権参加を拒否していた左派政党PSOLのボウロスを大統領府大臣に任命。社会運動を動員する役割を担わせ、2026年選挙に向けた基盤強化を図る

  • ベネズエラでの意外な共闘

    • マドゥロ政権に批判的だったチャベス時代の側近エリアス・ハウアや、中道・中道右派の政治家(カプリレス、ロサレスなど)が、米軍の脅威に対して一時的にマドゥロと共闘。「祖国が第一」という論理で、イデオロギー対立を超えた協力が生まれている

  • アルゼンチンでの露骨な選挙介入

    • トランプが2025年10月の立法選挙前に、ミレイ勝利を条件に400億ドルの支援を約束。短期的にはミレイが勝利したが、露骨な介入がペロン派から中道派まで幅広い批判を招き、反米感情とナショナリズムを刺激

  • トランプ支持と愛国心の矛盾

    • 米国内でトランプは歪んだ愛国心を利用できるが、ラテンアメリカではナショナリズムとトランプ支持は根本的に矛盾。関税、移民政策、軍事的威嚇、モンロー主義の復活が、各国で反米感情を煽っている

  • 右派のインターナショナル構想の失敗

    • バノンやレオポルド・ロペスが提唱する「右派の国際連帯」は、ヨーロッパでもラテンアメリカでも実現困難。トランプ政策への大衆の反発により、マチャドなど親トランプ派の人気が低下し、運動が分裂

  • チリとエクアドルでの左派の躍進

    • チリで共産党のハラが予備選で60.5%を獲得し、「米国兵士の入国拒否」を明言。エクアドルでは弾圧下でもコレア派が大統領選で善戦を続け、左派の回復力を示している

  • サンパウロ・フォーラムの再活性化の可能性

    • 100以上の左派組織が参加するフォーラムが2017年に起草した「我らのアメリカの合意」は停滞していたが、トランプの脅威が統一の新たな機運を生む可能性がある

  • 中国の戦略的台頭

    • 米国が信頼できない衰退する覇権国に見える中、中国は国家主権の擁護者として位置づけ。トランプのブラジル関税に対し、大豆輸出の代替市場を提供するなど、経済支援を通じた影響力拡大を図る

  • 統一戦線構築への課題

    • 感情的な反トランプ感情を、持続可能な組織化された協力関係に転換できるかが鍵。国内レベルでの統一戦線、およびCELACなど地域組織を通じた協力の制度化が求められている

  • 二極化ではなく収束

    • ラテンアメリカで起きているのは両極端の台頭ではなく、異なる政治的傾向を持つ進歩派がトランプへの反対で収束する現象。これまで傍観者だった左派が、国家主権と反帝国主義の旗の下で主要な政治的参照点になりつつある



キーワード解説


ピンクタイド(Pink Tide)

2000年代初頭からラテンアメリカで続いた左派・中道左派政権の台頭の波。「赤(共産主義)」ほど過激ではないが、社会民主主義的な政策を推進する政権群を指す


モンロー主義(Monroe Doctrine)

1823年にアメリカ合衆国が表明した、ヨーロッパ諸国によるアメリカ大陸への介入を拒否する外交方針。後に米国のラテンアメリカに対する覇権主義の正当化に利用された


砲艦外交(Gunboat Diplomacy)

軍事力の威嚇や実力行使によって外交目的を達成しようとする政策。トランプ政権がカリブ海で展開した軍事プレゼンスを指して使われている


サンパウロ・フォーラム(São Paulo Forum)

1990年にルラらが設立した、ラテンアメリカの100以上の左派組織が参加する協議体。地域の進歩的運動の調整を目的とする


ワシントン・コンセンサス(Washington Consensus)

1980年代末に形成された、市場自由化・民営化・規制緩和などの新自由主義的経済政策パッケージ。ラテンアメリカに大きな影響を与えた


CELAC(Community of Latin American and Caribbean States/ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)

2011年設立の地域組織。米国とカナダを含まず、ラテンアメリカ・カリブ33カ国で構成される独自の協力枠組み


チャビスタ(Chavista)

ベネズエラの故ウゴ・チャベス大統領の支持者や、彼の政治思想を支持する人々・運動を指す用語


国民制憲議会(Constituent Assembly)

新たな憲法を起草するために召集される議会。コロンビアのペトロ大統領が200万の署名を集めて実現を目指している


ピュロスの勝利(Pyrrhic Victory)

大きな犠牲を払って得た勝利で、実質的には敗北に等しい結果。紀元前279年にピュロス王がローマ軍に勝利したが甚大な損害を受けたことに由来


ペロン派(Peronist)

アルゼンチンの元大統領フアン・ペロンの政治思想を継承する勢力。労働者重視、国家主義、社会正義を掲げ、アルゼンチン政治の主要勢力の一つ



本稿は近日中にnoteにも掲載予定です。
ご関心を持っていただけましたら、note上でご感想などお聞かせいただけると幸いです。
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