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トランプ政治の背景にある「同族経営の時代」──1980年代の資本主義が変えたもの

シリーズ: 知新察来


◆今回のピックアップ記事:Kim Phillips-Fein "A Family Business: Trump’s theory of politics"(The Nation, 2025年10月14日)

  • 概要:メリンダ・クーパーの著書『Counterrevolution: Extravagance and Austerity in Public Finance』の書評記事。トランプ政治の本質を、1980年代以降の企業所有構造の変化——株主分散型の大企業から、非公開型・同族経営型企業への移行——という経済構造の変化から読み解く。トランプの支持基盤である中小事業主や自営業者たちが、大企業の株主ではなく家族経営の富豪たちに共感する背景を、政治経済学の視点から考察している。



トランプが2度目の大統領選に勝利した2024年、多くの人がこう問いました。「なぜ彼の政治は消えないのか」と。保守的な政治家として片付けるには異質で、単なる大衆迎合とするには執拗。そして何より、大企業のCEOではなく不動産王という肩書きの人物が、なぜこれほど広範な支持を集められるのか。


その謎に、社会学者メリンダ・クーパーは一つの視点を提示します。それは、企業の所有構造の変化です。20世紀半ばの株主分散型の大企業から、1980年代以降の非公開型・同族経営型の企業へ。この移行が、トランプという政治家の誕生と、彼を支持する人々の感覚を形作っているのではないか。富良野とPhronaの対話を通じて、現代の資本主義と政治の関係を探ります。




トランプという謎を「企業の形」から読み解く


富良野:トランプが再選されたとき、僕も正直驚いたんですよね。一度目は選挙制度の偶然という側面もあったけど、二度目は違う。何かが変わったんだって。


Phrona:わかります。私も最初は、あの人のことをただの目立ちたがりの不動産屋だと思ってたんですけど、それだけじゃ説明がつかなくなってきましたよね。


富良野:で、今日紹介したいのがメリンダ・クーパーという研究者の視点でね。彼女は、トランプ現象を理解するには、企業の所有構造の変化を見なきゃいけないって言ってるんです。


Phrona:企業の所有構造、ですか?


富良野:そう。20世紀半ばのアメリカ企業って、株主が何千人もいて、プロの経営者が運営する、いわゆる株式公開企業が主流だったんですよ。でも1980年代以降、プライベート・エクイティとか、ベンチャーキャピタル、家族信託みたいな、所有者が直接経営を握る形態が増えてきた。


Phrona:ああ、なるほど。つまり、たくさんの株主に見られながら経営する大企業から、自分たち一族で好きにできる会社が増えたってことですね。


富良野:まさに。そして、トランプ自身がまさにその典型なんですよ。トランプ・オーガニゼーションって非公開企業で、株主総会も四半期報告もない。要するに誰にも説明責任を負わずに、自分の判断だけで動かせる。


Phrona:うわあ、それって……彼の政治のやり方とまんま同じじゃないですか? 大統領令を連発して、議会や専門家の意見を聞かずに決めちゃうみたいな。


富良野:そうなんです。クーパーの議論の面白いところは、トランプの政治スタイルを単なる性格の問題としてじゃなく、彼が属してきたビジネスモデルそのものの反映として見るところなんですよね。


誰に説明するのか、誰が決めるのか


Phrona:でも富良野さん、大企業だって昔から強かったじゃないですか。所有構造が変わっただけで、そんなに政治が変わるものですか?


富良野:いい質問ですね。実は、株主分散型の大企業って、意外と社会的なプレッシャーに弱かったりするんですよ。株主たちが見てるから、あからさまに社会規範に反することはしづらい。消費者の反発も怖い。


Phrona:ああ、なるほど……。だから大企業は一応、多様性を推進したり、環境目標を掲げたりするわけですね。それが儲けに直結するかどうかは別として。


富良野:そうそう。いわゆる「企業の社会的責任」ってやつね。でも非公開企業や家族経営の会社は、そういうしがらみがない。株主に説明する必要もないから、もっと過激な政治活動にも踏み込める。


Phrona:じゃあ、政治献金とかも?


富良野:ええ。クーパーが例に出してるのが、コーク兄弟とかデヴォス一族。彼らは非公開企業のオーナーで、リバタリアン的な政治運動に莫大な資金を注いできた。公開企業だったら、「そんなことしたらブランドイメージ悪くなりますよ」って言われるようなことでも、平気でやれちゃう。


Phrona:なんだか、すごく自由なようで、すごく危ういですね……。チェック機能がないって、そういうことなんだ。


トランプを支持する「小さな経営者」たち


富良野:さらにクーパーが指摘してるのは、トランプの支持基盤の話なんですよ。よく「労働者階級の白人がトランプを支持してる」って言われるでしょ?


Phrona:ええ、製造業で職を失った人たちとか、そういう話ですよね。


富良野:実はね、もうちょっと複雑なんです。トランプの熱心な支持者の中核って、実は自営業者や中小企業のオーナーなんですよ。配管工、電気工事業者、トラック運転手で自分の会社を持ってる人たち。


Phrona:あ、労働者っていうより、小さいながらも経営者なんですね。


富良野:そう。彼らにとって、イーロン・マスクみたいなテック億万長者や、トランプみたいな不動産王って、実は親近感があるんです。規模は全然違うけど、同じ「自分で商売してる」仲間だと。


Phrona:でも、税制面で本当に利益があるんですか? トランプの減税って、結局お金持ちのためのものじゃないですか。


富良野:まあ、規模的には億万長者のほうが圧倒的に恩恵を受けてるけど、中小の事業主にも恩恵はあるんですよ。例えば「パススルー控除」っていう制度があって、これは事業所得を個人の所得として申告できるんだけど、その際に控除が受けられる。


Phrona:ああ、そうなんだ……。じゃあ、億万長者と中小事業主が、税制面でゆるやかに連帯してるみたいな構図になってるわけですね。


富良野:クーパーが言うには、「最小の家族経営から最大の家族帝国まで」を結ぶ同盟なんですよ。実際の利益の大小は別として、イメージとしては同じ側にいるって感覚がある。


大企業vs家族経営、その政治的な意味


Phrona:でも富良野さん、そうなると逆に、大企業はどうなんですか? S&P500に入ってるような大企業は、トランプに反対してるんですか?


富良野:いや、そこが微妙なんですよね。大企業は必ずしもリベラルじゃない。ただ、株主や消費者の目があるから、あからさまに保守的な文化戦争には加担しづらい。


Phrona:いわゆる「ウォーク資本主義」ってやつですか?


富良野:まあ、批判的にはそう呼ばれてますね。でもクーパーに言わせれば、それは別に企業が進歩的になったわけじゃなくて、単に株主に対する説明責任があるから、リスクを避けてるだけなんですよ。


Phrona:なるほど……。じゃあ、非公開企業のほうが、もっと自由に政治的に動けるってことなんですね。良くも悪くも。


富良野:そういうこと。で、トランプの内閣を見てみると、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ、不動産業界出身者だらけなんですよ。一期目も二期目も。


Phrona:つまり、トランプ政権って、大企業の利益を代弁してるというよりは、非公開企業や同族経営の利益を代弁してる政権だ、と。


富良野:まさに。そして、その経営スタイルが政治にも持ち込まれてる。誰にも説明せず、自分の判断だけで決める。従業員には突然クビを宣告する。気に入らない人間は容赦なく排除する。


Phrona:あー……それって、まさに今の政権でやってることそのものじゃないですか。政府効率化部門とか言って、公務員を大量解雇したりとか。


富良野:そうなんですよ。トランプにとって、アメリカ合衆国は巨大な非公開企業みたいなもので、自分がオーナーで、国民はその従業員か株主ですらない傍観者なんです。


家族と資本主義——なぜ保守的な価値観とセットなのか


Phrona:ところで富良野さん、ここまでの話って経済の話じゃないですか。でもトランプ支持者って、中絶反対とか、伝統的な家族観とか、文化的な保守主義も強いですよね。その繋がりって、どう考えればいいんでしょう?


富良野:それこそが、クーパーの議論の核心なんですよ。彼女は前著で、新自由主義的な経済政策と家族主義的な保守主義は、実は矛盾してないって論じてるんです。


Phrona:え、どういうことですか? 自由市場と伝統的家族って、正反対じゃないんですか?


富良野:一見そう見えるけどね。でも考えてみてください。資本主義って、競争を煽って、人々を不安定にするでしょ。労働組合は弱体化されて、福祉は削られて、人々は孤立していく。


Phrona:ああ、なるほど……。じゃあ、そこで頼れるのが家族だけになるんですね。


富良野:そう。家族だけが、市場競争の外にある安定した関係として残る。クリストファー・ラッシュの言う「非情な世界の安息所」ってやつです。


Phrona:でもそれって、結局、女性が犠牲になる構造ですよね。男性が外で競争して、女性が家で支えるっていう。


富良野:まさにそうなんです。経済が不安定になればなるほど、伝統的な性別役割分担が求められる。そして、クーパーが今回の本で追加してるのは、家族が単なる安息所じゃなくて、ビジネスモデルとしても復権してきたってこと。


Phrona:ビジネスモデルとしての家族……?


富良野:家族経営の会社が増えてきたってことです。20世紀半ばは、大企業がプロの経営者に運営されてたけど、今は創業者一族が経営を握る会社が目立つようになった。


Phrona:ああ、経済的なモデルとしても、家族が中心に戻ってきたわけですね。それで、政治的にも家族主義が強調されるようになった、と。


富良野:そうなんです。経済構造と文化的価値観が、同じ方向を向いてるんですよ。


中絶と国家財政を結びつける奇妙な論理


Phrona:でも富良野さん、中絶の話って、もっと宗教的な価値観とか、生命倫理の問題じゃないですか? それも経済と結びつけるんですか?


富良野:これが驚くことに、クーパーは共和党が中絶を経済問題として語り始めてることを指摘してるんですよ。


Phrona:え、どういうふうに?


富良野:2022年に共和党の議会経済委員会が出したレポートがあって、そこで中絶が国家財政に与える損失を試算してるんです。なんと、6.9兆ドルだって。


Phrona:ろ、6.9兆ドル……? どうやってそんな数字を?


富良野:かなり無理のある計算らしいんだけど、要は、生まれてこなかった人たちが将来稼いだはずの所得が失われた、という理屈なんですよ。さらに、生まれなかった天才たちが発明したかもしれないイノベーションも失われたとか。


Phrona:それ、さすがにめちゃくちゃじゃないですか……。


富良野:まあ、極論だよね。でもクーパーが注目してるのは、こういう議論の背後にある考え方なんです。つまり、福祉国家と中絶を結びつけて考える発想。


Phrona:どういうことですか?


富良野:一部の極端な思想家は、こう考えてるんですよ。福祉国家が発達すると、親子の経済的なつながりが弱まるって。保育園があれば親が子を教える必要がなくなり、年金があれば子が親を養う必要がなくなる。


Phrona:ああ、家族の経済的な紐帯が切れていくわけですね。


富良野:そう。で、家族が経済的に結びつかなくなると、人々は納税者として生産的でなくなって、結局、福祉国家は財政的に破綻する、と。そして中絶は、将来の納税者を減らすから、同じく財政を破綻させる、という理屈なんです。


Phrona:うーん……すごくトリッキーな論理ですね。でも、そこまで経済に還元しちゃうと、中絶反対運動の宗教的な側面とか、草の根の運動としての歴史とか、そういうのが見えなくならないですか?


富良野:その点は、クーパーも批判されてるところではあるんですよね。すべてを経済構造で説明しようとしすぎてる、という。


労働組合の崩壊と民主主義の空洞化


Phrona:ここまでの話を聞いてると、結局、昔あった「チェック機能」が全部なくなってきたってことですよね。大企業には株主がいて、労働者には組合があって、それが権力を制約してたのに。


富良野:そう、まさにそこなんですよ。クーパーが強調してるのは、レーガン政権の労働組合への攻撃が、いかに長期的な影響を及ぼしたかってことなんです。


Phrona:航空管制官のストライキを潰したやつですよね。


富良野:1981年ですね。レーガンは1万人以上のストライキ参加者を解雇して、業界から永久追放したんです。で、それが民間企業にもメッセージを送った。「組合潰しをやっていいんだ」って。


Phrona:それで、労働組合の組織率がどんどん下がっていったんですね。


富良野:今や民間部門の労働者の6パーセントしか組合に入ってない。で、これが単なる労働問題じゃなくて、政治の問題なんですよ。


Phrona:というと?


富良野:労働組合って、労働者に階級意識を与えて、集団として行動する経験を与える装置だったわけですよ。それがなくなると、人々はバラバラになって、孤立して、不安になる。


Phrona:そして、その不安や怒りが、トランプみたいな強いリーダーを求める感情につながっていく……。


富良野:そうなんです。クーパーの議論からすると、トランプ現象って、単に彼個人のカリスマとか、人種差別的な感情だけじゃなくて、経済構造の変化によって作られた空白に生まれたものなんです。


Phrona:労働組合も弱くなって、大企業も株主への説明責任を軽視するようになって、人々は自分たちの経済が誰のコントロール下にあるのかわからなくなった。


富良野:まさに、「コントロール不能」な感じですよね。そして、そんな世界で、家族経営の富豪たちは誰にも説明せず自由に振る舞えるようになった。


じゃあ、私たちはどうすればいいのか?


Phrona:でも富良野さん、ここまで聞くと、すごく絶望的な気持ちになるんですけど……。じゃあ、どうすればいいんですか?


富良野:そこなんですよね。クーパーの本は、診断は鋭いんだけど、処方箋はちょっと弱いんですよ。彼女は「財政革命」が必要だって言ってて、緊縮財政じゃなくて、社会支出を大胆に増やすべきだと。


Phrona:医療、教育、保育とかにお金を使えってことですよね。


富良野:そうです。でも、それを実現する政治的な力をどうやって作るのかは、あんまり語られてない。ストライキとか、家賃不払い運動とか、公共空間の占拠とか、いろいろ挙げてはいるんだけど。


Phrona:うーん、それって、断片的な抵抗にとどまっちゃう感じがしますね。


富良野:ただ、クーパー自身の分析から逆算すると、ヒントは見えてくるんですよ。結局、失われたものを取り戻すしかないんじゃないか、と。


Phrona:失われたもの……労働組合とか、集団で行動する経験、ですか?


富良野:そうです。労働組合、借家人組織、独立系メディア、地域の政治団体。そういう、人々が実際に権力を行使できる中間的な組織を再建すること。


Phrona:なるほど……トランプみたいな個人崇拝の政治に対抗するには、むしろ集団的な力を取り戻すしかない、と。


富良野:そう。トランプは、自分ひとりで世界を動かせるって幻想を振りまいてる。でも、実際には社会ってものすごく相互依存的で、上にいる人間が全部コントロールしてるわけじゃない。


Phrona:その当たり前の事実を、もう一度みんなが実感できるようにする、と。


富良野:まさに。20世紀半ばに大企業が少しでも社会的責任を負うようになったのだって、労働組合をはじめとする組織的な圧力があったからなんですよ。労働組合は、経済が一人の人間の私物じゃなくて、何百万人もの労働によって成り立ってるんだってことを、具体的な形で示す装置だったんです。


Phrona:でも、それって長い時間がかかりますよね。


富良野:ええ、間違いなく。でも、クーパーが提供してくれたのは、トランプ現象を単なる文化的な問題じゃなくて、物質的な関係、経済構造の問題として捉える視点なんです。


Phrona:つまり、文化戦争だけで戦っても勝てない。構造そのものを変えないと。


富良野:そういうことです。人々の物質的な生活にもっと民主主義を取り戻すこと。それが、今の野蛮な状況に対する最大の挑戦になるんじゃないか、とクーパーは示唆してるんですよね。


Phrona:希望があるとすれば、それは遠い理想じゃなくて、足元の組織化から始まる、ってことですね。


富良野:そう。地域の政治も含めて、具体的な民主的経験を積み重ねていくこと。トランプに惹かれてる人たちに、「もっと違うやり方があるよ」って示していくこと。


Phrona:それはきっと、選挙で勝つだけじゃなくて、日々の生活の中で民主主義を実践していくってことなんでしょうね。


富良野:まさに。簡単じゃないけど、やるしかない。それが、クーパーの本から読み取れるメッセージだと僕は思います。



 

ポイント整理


  • 企業所有構造の歴史的変化

    • 20世紀半ばのアメリカ経済は、株主が分散した大規模な公開企業によって支配されていたが、1980年代以降、プライベート・エクイティ、ベンチャーキャピタル、家族信託など、所有者が直接経営を握る非公開型企業が増加した。この変化により、企業は株主や外部の監視から自由になり、より過激な政治活動や文化的保守主義を推進できるようになった。

  • トランプの経営スタイルと政治手法の一致

    • トランプ・オーガニゼーションは典型的な非公開の同族経営企業であり、株主総会も四半期報告も存在しない。このビジネスモデルが、大統領としての彼の統治スタイル——大統領令の多用、専門家の軽視、説明責任の欠如、独断的な意思決定——に直接反映されている。トランプにとって国家は巨大な私企業であり、国民は株主ですらない傍観者である。

  • トランプ支持基盤の実像

    • 一般的に「労働者階級の白人」がトランプを支持していると言われるが、実際のコア支持層は自営業者や中小企業オーナーである。配管工、電気工事業者、トラック運転手など、小規模ながら事業を営む人々にとって、億万長者の実業家たちは「同じ経営者仲間」として親近感を持たれる存在であり、税制面でも実際に利益を共有している。

  • 新自由主義と家族主義の共鳴

    • 新自由主義的な経済政策は労働組合を弱体化させ、福祉を削減し、人々を孤立させる。その結果、市場競争の外にある安定した関係として家族の重要性が高まり、伝統的な性別役割分担が強化される。さらに、経済的にも家族経営型企業が復権したことで、経済構造と文化的価値観が同じ方向を向くようになった。

  • レーガン政権の労働組合攻撃の長期的影響

    • 1981年の航空管制官ストライキへの弾圧は、民間企業にも組合潰しを促す強いメッセージとなった。労働組合の組織率は劇的に低下し、現在では民間部門労働者のわずか6パーセントしか組合に加入していない。この変化は労働問題にとどまらず、労働者の階級意識と集団行動の経験を奪い、人々をバラバラにし、トランプのような強権的リーダーへの渇望を生み出した。

  • 民主主義的制度の空洞化

    • 大企業における株主への説明責任の低下、労働組合の衰退、独立した官僚機構の弱体化により、権力を制約するメカニズムが失われた。非公開企業や家族経営企業の経営者たちは、かつての大企業経営者が直面した構造的制約から解放され、誰にも説明せずに行動できるようになった。この経済的な民主主義の空洞化が、政治的な権威主義の台頭を可能にしている。

  • 中絶問題の経済化

    • 共和党の一部では、中絶を財政問題として語る奇妙な論理が現れている。中絶によって失われる将来の納税者や労働力を経済損失として計算し、福祉国家が家族の経済的紐帯を弱めることで財政破綻を招くという議論と結びつける。これは文化的保守主義を経済論理で正当化しようとする試みだが、中絶反対運動の宗教的・草の根的側面を見落とす危険性も孕んでいる。

  • 対抗戦略としての組織再建

    • トランプ現象に対抗するには、個々の選挙で勝利するだけでは不十分であり、失われた中間組織——労働組合、借家人組織、地域政治団体、独立系メディアなど——を再建し、人々が実際に権力を行使する経験を取り戻す必要がある。経済が少数の富豪の私物ではなく、何百万人もの労働によって成り立っているという事実を、具体的な組織形態で示すことが重要である。

  • 物質的生活における民主主義の回復

    • トランプ政治に対する最も根本的な挑戦は、文化戦争のレベルではなく、人々の日常的な物質的生活に民主主義を取り戻すことにある。職場、地域、住居において民主的な経験を積み重ねることで、強権的なリーダーとは異なる政治のあり方を示すことができる。これは長期的な取り組みだが、構造的変化なくして持続的な対抗は不可能である。



キーワード解説


株主分散型企業】

多数の株主によって所有され、専門経営者によって運営される公開企業。株主総会や四半期報告を通じて一定の説明責任を負う。


非公開企業】

株式を一般に公開せず、限られた所有者によって経営される企業。株主への報告義務が少なく、経営の自由度が高い。


プライベート・エクイティ】

非公開企業への投資を行うファンド。少数の投資家から資金を集め、企業を買収・再編して利益を得る。


ベンチャーキャピタル】

スタートアップ企業に投資し、成長を支援する投資ファンド。創業者が経営権を保持することが多い。


家族信託】

一族の資産を管理・承継するための法的仕組み。世代を超えて富を保持し、税負担を軽減できる。


パススルー控除】

事業所得を個人所得として申告する際に受けられる税控除。中小事業主から大企業オーナーまで幅広く恩恵を受ける。


レバレッジド・バイアウト】

借入金を活用して企業を買収すること。1980年代に急増し、株主の力を強化した。


新自由主義】

市場の自由を重視し、政府の経済介入を最小限にしようとする経済思想。規制緩和、民営化、緊縮財政などを推進する。


量的緩和】

中央銀行が国債などを大量に購入して市場に資金を供給する政策。資産価格を支え、富裕層の資産を増やす効果がある。


ティーパーティー運動】

2009年頃から活発化した保守的な草の根運動。減税と小さな政府を掲げたが、実際には中小事業主が中核を担っていた。


プロジェクト2025】

トランプ再選に備えて保守派が作成した政策提言集。伝統的なジェンダー規範の強化など、文化的保守主義が色濃い。


S&P500】

アメリカの代表的な500社の株価指数。大規模な公開企業を代表する指標。


キリスト教再建主義】

旧約聖書の律法を現代社会に適用しようとする極端な神学運動。福祉国家を家族の絆を破壊するものとして批判する。



本稿は近日中にnoteにも掲載予定です。
ご関心を持っていただけましたら、note上でご感想などお聞かせいただけると幸いです。
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