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本ブログの内容は、あくまで代表 徐勝徹の個人的な見解であり、Projeteam, Inc.の公式見解や業務上の立場を示すものではありません。
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論文渉猟


市民が予算を決める時代──ドミニカ共和国に学ぶ参加型予算制度の可能性
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Geovanny Vicente-Romero " Participatory Budgeting Within the Framework of Open Government: Dominican Republic as a Case Study " (Columbia University Academica Commons, 2022年2月8日) 概要: オープンガバメントの枠組みにおける参加型予算制度について、ドミニカ共和国の20年以上の実践例を分析した学術論文。 私たちの税金がどう使われているか、政治の決定過程に自分たちの声はどれくらい届いているだろうか。「政治家任せ」ではない、もっと直接的な民主主義の形があることをご存知でしょうか。それが「参加型予算制度」です。この制度は、市民が実際に自治体の予算の一部について、何にお金を使うかを直接決めることができる仕組みで、世界各地で実践されています。 今回は、20年以上にわたってこの制度を運用しているドミニカ共和国の事例を通じて、民主主義の新しい可能性に

Seo Seungchul
2025年11月17日読了時間: 8分


人的資本と人種格差──労働市場の見えない壁について考える
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Owen Thompson " Human Capital and Racial Inequality in the US Labor Market " (NBER Working Paper, 2025年9月) 概要: アメリカ労働市場における人種格差を人的資本の観点から分析し、教育水準や能力測定値の格差が解消された場合の賃金・雇用格差への影響を検討した研究。 アメリカの労働市場では、今も黒人と白人の間に大きな賃金格差が存在しています。この格差は、教育水準や能力テストの得点といった人的資本の違いだけでは説明しきれない部分が多いのです。もし教育格差がすべて解消されたとしたら、賃金格差はどこまで縮まるのでしょうか?そして残る格差は何を意味するのでしょうか? この問題を理解することは、現代社会における構造的不平等の本質を見抜く上で欠かせません。富良野とPhronaの対話を通じて、人的資本理論の限界と、労働市場に潜む見えない障壁について考えてみましょう。単純な数字の裏にある、複雑で微妙な社会の仕組みが見えてくるか

Seo Seungchul
2025年11月13日読了時間: 10分


言語AIの新たな可能性──LLM-JEPAが示すピクセル予測からの脱却
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文:Hai Huang et al. "LLM-JEPA: Large Language Models Meet Joint Embedding Predictive Architectures" (arXiv, 2025年9月11日) 概要: 大規模言語モデルに画像処理で成功したJEPA手法を適用し、従来の単語予測を抽象表現空間での予測に置き換える新しい学習アプローチを提案した研究論文。 コンピュータビジョンの世界では、何年も前から「抽象表現を予測する」という手法が標準になっています。一方で、言語処理の世界はいまだに「次の単語を当てる」という昔ながらの方法にとどまっています。この差はなぜ生まれたのでしょうか。 実は、この問題に本格的に取り組んだ研究が2024年9月に発表されました。LLM-JEPAと呼ばれるこの手法は、画像認識で既に確立されたJEPA(統合埋め込み予測アーキテクチャ)を言語モデルに適用し、従来の言語学習を根本から見直すアプローチです。 この研究が示すのは単なる性能向上にとどまりません。AIが世界

Seo Seungchul
2025年11月10日読了時間: 8分


AIエージェントが創る新しい経済のルールとは?──人工知能が「労働者」から「経済主体」になる時代を考える
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Ke Yang et al. " Ten Principles of AI Agent Economics " (arXiv, 2025年5月26日) 概要: AIエージェントが専門ツールから経済・社会生態系の動的参加者へと進化する中で、その意思決定メカニズム、社会的相互作用への影響、経済活動への参加方法を理解するための10の原則を提示した研究論文。 碁で人間を凌駕し、今や日常のさまざまな課題を解決してくれるAIエージェント。でも、これまでのAIは結局「ツール」でした。私たちが指示を出して、それに従って動く存在だったんです。 ところが最近の研究では、AIエージェントがもっと自律的で経済的な主体として機能する可能性が議論されています。つまり、単なる道具ではなく、意思決定をし、他のエージェントと協力したり競争したりする「経済プレイヤー」としてのAIです。 イリノイ大学の研究チームが発表した「AIエージェント経済学の10原則」は、この新しい時代に向けた重要な指針を提示しています。AIが自律的に判断し、労働市場に参

Seo Seungchul
2025年11月8日読了時間: 10分


なぜ「理想的」なメカニズムは現実で使われないのか?──ドロップアウト問題から見える市場設計の新たな課題
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Yuichiro Kamada et al. "Robust Exchange" (Social Science Research Network, 2025年9月17日) 概要: 交換市場における参加者のドロップアウト問題に関する初の本格的な経済分析。TTCメカニズムの実用上の課題を明らかにし、k-greedyメカニズムという新しい解決策を提案。理論分析とシミュレーションの両面から、小さなサイクル制約を持つメカニズムの優位性を実証。 経済理論では効率的で公平とされるTop Trading Cycles(TTC)メカニズムが、なぜ実際の交換市場ではあまり使われていないのでしょうか。理論上は素晴らしいはずの仕組みが現実で機能しないとき、そこには見落とされた重要な問題が隠れています。今回は、参加者が取引成立後にドロップアウトする可能性という、これまで十分に検討されてこなかった視点から、この謎に迫ってみます。 腎臓交換や学校選択といった分野で活用されるTTCメカニズムの限界と、それを補う新しいk-greedyメカ

Seo Seungchul
2025年11月5日読了時間: 9分


AIは自分の「脳」を理解できるか?── 大型言語モデルのメタ認知能力を探る
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Li Ji-An et al. "Language Models Are Capable of Metacognitive Monitoring and Control of Their Internal Activations" (arXiv, 2025年5月19日) 概要: 大型言語モデルのメタ認知能力、特に内部神経活動パターンの監視・制御能力を神経科学由来のニューロフィードバック手法で定量化した研究 私たちが日常的に使っているChatGPTやClaude、Geminiなどの大型言語モデル(LLM)。これらのAIは時として、自分がどのような戦略で問題を解決しているかを説明してくれることがあります。しかし、時にはうまく説明できないこともあります。この現象は、AIがある程度の「メタ認知能力」を持っていることを示唆しているのかもしれません。 メタ認知能力とは、自分の思考過程を監視し、制御する能力のこと。人間でいえば「今、自分がどう考えているか」を意識し、必要に応じて思考戦略を変更する力です。もしAIがこの能

Seo Seungchul
2025年10月31日読了時間: 10分


DeepSeek-R1が示す「推論する」AIの進化と未来
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Daya Guo et al. "DeepSeek-R1 incentivizes reasoning in LLMs through reinforcement learning" (Nature, 2025年9月17日) 概要: 人間の推論例に依存せず、強化学習のみで大規模言語モデルに高度な推論能力を獲得させる手法を開発。自己反省、検証、戦略適応などの推論パターンが自然発生し、数学やプログラミング分野で顕著な性能向上を実現した。 AIが本当に「考える」ようになったとき、私たちは何を目撃するのでしょうか。従来の大規模言語モデルは、人間が用意した膨大な例文から学習し、まるで思考しているかのような文章を生成してきました。しかし、人間が作った「考え方の手本」に依存するという限界がありました。今回発表されたDeepSeek-R1は、その常識を覆す実験の成果です。人間の手本なしに、強化学習という仕組みだけで、AIが自発的に高度な推論パターンを身につけたのです。 このモデルは数学オリンピック問題で人間の平均を大幅に

Seo Seungchul
2025年10月30日読了時間: 9分


「何が重要か」を見抜く力──生きることの根本にある認知プロセス
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Johannes Jaeger et al. "Naturalizing relevance realization: why agency and cognition are fundamentally not computational" (Frontiers in Psychology, 2024年6月24日) 概要: 生物の認知プロセスが本質的に計算的ではない理由を、関連性実現の概念を通じて論じた論文 情報が溢れる現代、私たちが常に直面するのは「何が重要なのか」を見分ける課題です。仕事でも日常生活でも、膨大な選択肢の中から本当に意味のあるものを選び取る力が問われています。 しかし、この「関連性の実現」と呼ばれるプロセスは、実は人間だけでなく、バクテリアから植物まで、すべての生物が持つ根本的な能力なのです。最新の研究では、この能力こそが生物を非生物から分ける決定的な特徴であり、コンピューターのアルゴリズムでは完全に再現できない生命の謎の核心にあることが明らかになっています。 認知科学、哲学、生物学の

Seo Seungchul
2025年10月29日読了時間: 11分


バーチャル民主主義の約束と現実──DecentralandのDAO研究が明かすデジタル社会の課題
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Andrea Peña-Calvin et al. "Is DAO Governance Fostering Democracy? Reviewing Decision-Making in Decentraland" ( Proceedings of the 58th Hawaii International Conference on System Science , 2025年1月) 概要: Decentralandという仮想世界プラットフォームのDAO運営における投票動向と提案結果を分析し、民主的意思決定の実態を検証した研究論文 トークンを持っていれば誰でも投票に参加できる。権力の集中はなく、透明性が保たれ、誰もが対等に議論に参加できる——。 ブロックチェーン技術を基盤とした自律分散組織(DAO)は、こうした理想的な民主的意思決定を約束してきました。しかし、仮想世界の運営で注目を集めるDecentralandでの最新研究は、この楽観的な見方に疑問符を突きつけています。 2024年に発表された研究論文では

Seo Seungchul
2025年10月28日読了時間: 8分


AIエージェントのコスト削減ジレンマ──性能を保ちながら28%の効率化を実現
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Wangchunshu Zhou et al. "Efficient Agents: Building Effective Agents While Reducing Cost" (arXiv, 2025年7月24日) 概要: 大規模言語モデル駆動のエージェントシステムにおける効率性と有効性のトレードオフを初めて体系的に分析し、性能を維持しながらコストを大幅に削減するEfficient Agentsフレームワークを提案した研究論文 ChatGPTやClaude、そして話題のDeepSeekなど、AIの進化が著しいこの時代。でも実用的なAIエージェントを作ろうと思うと、性能は上がるけれど運用コストが爆発的に増えて、経済的に持続可能じゃないという壁にぶつかります。例えば、複雑な作業を自動化するエージェントシステムでは、1つのタスクに数百回のAPI呼び出しが必要になることも珍しくありません。まるで、高性能なスポーツカーを買ったのに燃費が悪すぎて日常使いできない、そんな状況です。 この記事では、新たな研究論文「Eff

Seo Seungchul
2025年10月27日読了時間: 10分


AI学習の革命──なぜ「反省する」プロンプトが強化学習を超えるのか
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Lakshya A Agrawal et al. "GEPA: Reflective Prompt Evolution Can Outperform Reinforcement Learning" (arXiv, 2025年7月25日) 概要: 大規模言語モデルの学習において、従来の強化学習手法に代わる「反省的プロンプト進化」という新しいアプローチを提案。自然言語による振り返りを活用することで、従来手法を10〜20%上回る性能を35分の1の試行回数で実現した研究。 最近のAI研究で、人間の学習に近い方法でAIが自分自身を改善する画期的な手法が登場しました。それがGEPA(Genetic-Pareto)です。テストの点数だけ見て次に進むのではなく、間違いを振り返って「なぜうまくいかなかったのか」を言葉で分析する。そんな人間らしい学習プロセスを、AIの世界に持ち込んだのがこの研究の革新性です。 従来の強化学習では、何千回もの試行錯誤を重ねて少しずつ改善していく必要がありました。しかしGEPAは、わずか数回の経験

Seo Seungchul
2025年10月17日読了時間: 9分


複雑な問題に対するシンプルな解決策?──ガバナンス理論から考える社会の難題
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: B. Guy Peters et al. " Simple solutions for complexity? " (『Global Challenges, Governance, and Complexity:...

Seo Seungchul
2025年10月11日読了時間: 7分


「解決不可能な問題」の正体を探る──政策分析におけるウィキッド・プロブレム論
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: B. Guy Peters " What is so wicked about wicked problems? A conceptual analysis and a research program " (Policy and...

Seo Seungchul
2025年9月28日読了時間: 12分


脳はいつから「脳」になったのか?──神経系誕生の謎を探る
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Sebastián R. Najle et al. " Stepwise emergence of the neuronal gene expression program in early animal evolution" (Cell, 2023年10月12日) 概要: 動物の神経系進化における遺伝子発現プログラムの段階的発達を、比較ゲノム学的手法で解析した研究論文 私たちの脳は、どうやって生まれたのでしょうか。考えてみると不思議ですよね。海にふわふわ漂っているクラゲにも神経系があるし、私たちヒトの複雑な脳も、元をたどれば同じ起源から生まれているはずです。 でも、その「元」って一体何だったのでしょう。そして、いつから神経細胞は「神経細胞らしく」振る舞うようになったのか。2023年に発表された最新の研究が、この根本的な謎に新しい光を当てています。 今回は、富良野とPhronaの対話を通じて、神経系進化の最前線を探ってみます。遺伝子の発現パターンから読み解く進化の物語は、私たちが思っている以上にドラマチック

Seo Seungchul
2025年9月26日読了時間: 7分


市民の観察が科学を変える──鳥類データから広がる「リスク予測」の新時代
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文: Orlando Acevedo-Charry et al. "Monitoring population extinction risk with community science data" (Journal of Applied Ecology, 2025年7月12日) 概要: eBirdデータを用いて地域の絶滅リスクを推定するリスクベース実行可能個体群モニタリング手法を開発し、絶滅危惧種エバーグレーズタニシトビの標準化モニタリングデータと比較検証した研究 世界中のバードウォッチャーが日々投稿している観察記録が、生物保全の常識を変えようとしています。従来、絶滅リスクの評価には専門家による長期間の標準化調査が必要でしたが、新しい研究では市民参加型のeBirdデータから、地域レベルでの絶滅リスクを週単位で予測する手法が開発されました。 この手法の核心は、膨大な市民データの「ノイズ」から「真の生態変化」を数学的に分離する技術にあります。研究者たちは、絶滅危惧種エバーグレーズタニシトビで実証実験を行い、市民デ

Seo Seungchul
2025年9月25日読了時間: 11分


AIと学習者の新しい関係性を探る──人間中心型と機械中心型の間で見える教育の未来
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文:Min Lan et al. "A qualitative systematic review on AI empowered self-regulated learning in higher education" ( npj...

Seo Seungchul
2025年9月23日読了時間: 9分


AIとの恋愛は現実になった?──Reddit最大のAIコンパニオンコミュニティの実態分析
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文:Pat Pataranutaporn et al. " 'My Boyfriend is AI': A Computational Analysis of Human-AI Companionship in Reddit's AI...

Seo Seungchul
2025年9月22日読了時間: 10分


信頼がカギを握る循環経済──なぜ私たちは「使い捨て」から脱却できないのか
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回のレポート:British Standards Institution (BSI) and University of Cambridge Institute for Sustainability Leadership (CISL) "The...

Seo Seungchul
2025年9月21日読了時間: 10分


AIは「科学する」知性になり得るのか?──ファウンデーションモデルの限界を探る
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文:Keyon Vafa et al. "What Has aFoundation Model Found? Using Inductive Bias to Probe for World Models" (arXiv,...

Seo Seungchul
2025年9月18日読了時間: 8分


哲学は本当に「考える力」を鍛えるのか?
シリーズ: 論文渉猟 ◆今回の論文:Michael Prizing "Studying Philosophy Does Make People Better Thinkers" (Journal of the American Philosophical...

Seo Seungchul
2025年9月16日読了時間: 8分
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